笹子トンネル事故の原因調査が遅々として進まないのは何故だろう? 相変わらずダラダラと時間ばかり経過して、ほとぼりが醒めるの
を待っているのだろうか? 国交省と中日本高速株式会社は自分達の責任について全く何も感じていない「悪いのは設計施工した業者」
とでも思っているのか? 我々、高速道路利用者は未だにトンネルを通る度に天井を見上げて怖い思いをしていることをご存知か?
国交省の「トンネル天井板の落下事故に関する調査・検討委員会」の報告サイトも3月27日以降は更新されていない。
そんな思いをしている5月の連休中に、読売新聞から「打音検査 劣化見抜けず」と第一面にデカデカと国交省の見解が報道された。
下記、サムネールをクリックして内容を参照して下さい。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130505-00000883-yom-soci
この記事を読んでいて感じたのは今更打音検査を公に云々している様では「技術立国である筈の日本の技術レベルは本当に高いのか?」
ということである。 言い換えれば、確かに日本の研究・開発・生産技術レベルは高いが、一旦工場からそれらのハイテク製品を出荷した
後は社会的にそれらを評価しフィードバックして更なる技術力を高める仕組みが軽視されているのではないかと思う。
日本は戦後の高度成長期を通して様々な優れた工業製品を開発して生産し、世界に輸出して発展してきた。
しかし、それらはあくまで製品としての優秀さであり、競争社会の中では不具合等のフィードバックは製造者側の品質向上・コスト
ダウンの手段として長期に亘って密かに活用されていたと考えられる。 即ち、自社製品の優位さを維持する為の手段である。
更に不具合があっても新製品にそれらを反映すれば事が済む時代が長く続いた。 リコールとか製造者責任を追求される様になった
のは、「諸外国でビジネスを展開するのに必要な企業責任」との考え方が近年になって定着した為と思われる。
とにかく日本の工業製品は圧倒的な高品質と低価格で、世界の工業製品市場を押さえて来た。 安くて物が良ければ売れた時代だ。
日本がマーケティングとか交渉力、広義で言うイノベーション力(新しい価値を生み出すプロセス」に劣るのはこんな時代が長く
続いたからと思う。 製品そのもので勝負する時代は終わった。 そんなものは後進国にすぐに追いつかれることは皆さんお解かりだ。
でも国をリードする官僚、学識経験者と呼ばれる古い頭を持った老人達、経団連、そして政治家達はそんな事さえ気付かなかったの
だろうか?
前振りが長くなったが、笹子トンネルの事故もこんな状況を背景に、起こるべきして起こったと私個人は信じています。
即ち、当時の最新技術である接着系アンカーボルトを使ってあれほどの重量物をトンネル内に構築したが、一度施工業者の手を離れて
しまうと信じられない様な維持管理しか行っていない。 この背景には、技術に対する認識欠如、過度のコストダウン意識、土建屋行政
と言われる政治家の過度な行政介入による急速な道路・建設事業の拡大が背景にあるのだろう。 成果となる新規工事・建設事業ばかり
に目を奪われ、維持管理費用が将来どのくらい必要なのかを考えられない政治家が圧倒的な人気があった・・のは選挙民である我々国民
の責任もあると思う。
今回の読売新聞の報道にある様に『打音検査 劣化見抜けず』とか以前に報道された『見て判る不具合を目視検査で発見出来なかった』
とか、『目視検査そのものを長期に亘り実施しなかった』とは一体何を示しているのか。それは、直接の管理責任者である中日本高速
株式会社経営者の経営能力欠如(1月9日の“ときどき日記”に掲載した中日本高速HPにCSRとして達成したKPIを公開して自慢して
いる感覚が理解出来ず)と、これだけの事故の可能性を持っている高速道路会社に対する監査体制に不備がある国土交通省の責任は大きい。
いつまでも、判りきっている結論をぐずぐずと先延ばしにしている関係者の早期処分と、今後の日本にあるべき社会インフラ整備として
あるべき維持技術を確立して欲しいものである。 「トンカチで叩いて検査する」など聞きたくもない!
原発事故も同様だが、維持管理こそ時間と費用と優れた人材が必要であることは疑いの余地が無い。