現在の愛車は2006年暮れのサイクルモードで一目惚れし、その足でサイクルハウスGIROへ向かいフレーム一式(FCT-18)を
オーダーしたものだ。購入当初に使っていたコンポーネントはそれまで使っていたInterMax RAISから移植したが、現在は
全て7800系のDuraAceに置き換わっている。しかし、唯一FCT-18に付属していたCane Creek S6ヘッドパーツだけは
一度も分解清掃しないまま約6年半も使用し続けている。
ヘッドパーツはそれ程磨耗するものではないが、雨天走行時に水が内部に入り込んで錆が発生している可能性があるので最悪
金属部分が破断してハンドルがロックされてしまうことも否定できない。
そんなことを考えていると流石に心配になり、内部の状況確認を兼ねてヘッドパーツのオーバーホールすることにした。
(1) ツールはそれ程多くは必要ない。5mm,8mmのアレンレンチ各1本、グリース、出来ればトルクレンチがあれば良い。
(2) 今回はラチェットレンチで作業を行う。 まず、5mm アレンレンチでプレッシャープラグのキャップを外す。
(3) フロントフォークを外すので、フロントブレーキワイヤを5mmアレンレンチで外す。
(4) ステムの固定スクリュー2本を外す。(下左側の写真)
(5) プレッシャープラグを引き抜く。今回はカーボンコラム用の「プレッシャーアンカー」なので、アルミコラム用の
「アンカーキャップ」とは形状が異なる。(アルミコラム用はヒトデの様な形状のスターアングルナットをコラムシャフト
の中に押し込み、ネジを締め込むとヒトデ状のツメがコラム内側に引っかかると共にフォーク全体を押し上げてガタを
取る構造だ。)
(6) これで、ステムとステムに繋がっているハンドルバーを引き抜く。 抜いた後はワイヤ類を痛めぬ様にロープでステム
をぶら下げておく。(下写真右)
(7) ヘッドパーツのダストカバー(CANE CREEK S6と書いてある黒いパーツ)を手で廻しながら上にずらすとテーパー
ワッシャーが現れ、フォーク全体が下に抜ける様になる。(下写真左)
(8) フォークを引き抜き、上側ワンのシールドベアリングを外す。グリースも残っており、回転もシブクない。クリーニング
すれば十分使えるレベルだ。
(9) 下側ワンのベアリングも外す。 上側と比べるとかなり汚れているが、錆びもなくグリースも残っていて良好な状態だ。
(10)
フォークコラムをクリーニングし、キズひび割れの有無を確認する。 フォークを軽くコンクリート床に
コンコンと当てる打音検査も有効と思われる。
(11)
下ワンのシート部分の汚れ、痛み具合を確認する。 ここも問題ない。
(12)
上側ワンのベアリングシート部分をクリーニングし、Duraグリースを塗りこむ。
(13)
ヘッドパーツ全体をクリーニングし、錆びその他の確認を行う。 順番が狂わぬ様に並べておく。 順番は上から
ダストキャップ、テーパーワッシャー、上ベアリング、下ベアリングとなる。 ベアリングは玉当り側が丸くなっている。
(14)
シールドベアリングをクリーニングし、回転がゴリゴリしていないか確認する。 確認後、ベアリングのO-Ringを外
して可能な限りDuraグリースを塗りこむ。
(15)
下ワンのベアリングをセットする。 上下の向きに注意。
(16)
上側シールドベアリングをセットする。この後フォークコラムを差込み、テーパーワッシャーをベアリングの上に入れる。
(17)
ダストキャップの内側には防水の為、ゴム製のO-Ringがはめ込まれているので、シリコングリースを塗りこんでおく。
(18)
上記(16)で差し込んだテーパーワッシャーの尖っている側をベアリングとフォークコラムのスキマに差し込む。
写真は、まだ差し込まれていない状態です。
(19)
下左の写真はFCT-18のヘッドに付属しているプレッシャーアンカー(プレッシャープラグ)だ。このプラグは主にカーボン製
のフォークコラムに使用されるが、どうやらこのパーツはCane
Creek製ではなくて、Panasonicのオリジナルの様な気が
する。見た目はアルミ地金の美しい形状をしているが、なかなかのクセモノだ。特殊な構造なので今後の忘備録として敢えて
クドク書くと;
写真の左側のテーパー状のリングにはメスネジが切ってあり、5mmアレンスクリューを締め込むと中央のO-Ringの付いた
シリンダが膨らんでフォークコラムのパイプ内側に押し付けてプレッシャーアンカーを固定する構造で、文字通りアンカーボルトだ。
次に、右側の一番直径の大きいキャップ部分(下写真中央のキャップ)には8mmアレンレンチで調整するもうひとつのスクリュー
が内蔵されていて、これを時計方向に廻すとキャップ部分(ステムを含む)を押し下げてヘッド部分のガタを取る構造になっている。
即ち、5mmアレンネジでアンカー全体を固定し、8mmアレンネジでヘッドのガタを取ることになる。
但し・・・8mmアレン部分のスクリューはLock to Lockで 1回転+1/4しか廻らない。 無理に回すと簡単に固着して
ガタ取りの調整が出来なくなってしまう。 従って、微調整しか出来ないので、ヘッドの組み付けはかなり厳格に行う必要がある。
多分、他の製品ではこんなにシビアな調整は必要ないと思われる。
(20)
プレッシャーアンカーをフォークコラムに差し込む。尚、プレッシャーアンカーのO-Ringにグリースを付けるとフリクションが
減少して固定力が弱くなるので、付けない方が良いとのこと。 キャップ部分の8mmアレンスクリューは反時計方向に一杯に
戻しておく。更に1回転+1/4以上回すことを防ぐ為にキャップ部分に目印を書いておくと気が楽だ。
(21)
5mmアレンレンチでフロントブレーキワイヤを固定する。 締め付けトルクは 6-8Nm程度。(下右の写真)
(22)
ステムを固定する前に5mmアレンレンチでプレッシャープラグをフォークコラムに固定する。締め付ける前にガタを最小に
調整する必要がある。
(23)
8mmアレンレンチでプラグのキャップ部分だけを時計方向に回しフォークコラムを引っ張り上げて、ヘッド部分のガタを
無くす様に調整する。 あまり強く引っ張り上げ過ぎるとハンドルが重くなるのでガタが無くなる程度で良い。
フォークコラムとステムの固定は、これらヘッドのスクリューでは無く、5mmアレンスクリュー2本で行う。
(24)
最後にハンドルとタイヤの位置を正しく調整し、ステムの5mmアレンスクリュー2本で固定して作業は終了だ。
締め付けトルクは一般的な資料では20Nmとなっているが、カーボンコラムの場合は勘で締め付ける方が良いと思われる。
以上で、作業は終了!
自分は雨中走行がそれ程多くないので、6年以上使ってもシールドベアリングの状態は悪くはならなかったが、錆びが発生してガイドが破断
もしくは固着すると大変な事故に直結するので2-3年に一度は確認した方が良いと思う。
先にも記載した通りアルミ製のフォークコラムの場合は「プレッシャーアンカー」の代わりにトップのキャップを含んだ「アンカーキャップ」
が使われるが、その他の構造、調整方法は同じである。但し、コストダウンの為にシールドベアリングでは無く、通常のベアリングボールと
玉受けの構造となっている場合が多いので分解の際にベアリングボールを落下させて紛失しない様に注意が必要だ。
今回、プレッシャーアンカー時計廻り一杯で固着していたこともあり、プラグ固定用スクリュー(5mm Hex)とヘッド引っ張り上げ用スクリュー
(8mm Hex)の2種類のスクリューがあるのに当初は気付かず、ヘッドのガタを取るのに大変苦労した。特に当初から車体に組み込まれて
いるパーツ類は説明書が無いので構造、調整方法、締め付けトルク等が不明の場合が多いので注意が必要と感じた。(オソマツ)
以上