昨年に引き続き、今年も幕張メッセで開催されている CEATEC 2013に行ってきました。 昨年は「工業立国日本の将来が不安になり」、今年は「CEATECは単なるお祭り騒ぎ?」
と思わずにはいられない展示内容で、またもや日本の電子技術/工業製品の将来に不安を感じてしまいました。 多分、理解度が大幅に不足している自分の思い違いと思いますが、
ハッキリ言って「面白くねーCEATEC2013」でした。
何故かって?と言われると説明が難しいのですが、自動車、家電製品の様な日本のメージャー工業製品の低迷を打ち破るようなイノベーション(単なる技術革新を超越して、社会的
規模で価値文化の創造を果たす改革)を喚起させる様な戦略的な出展が見当たらなかったからです。 殆どが今までの技術を更に発展させた単体製品、あるいはHEMSの様な応用
技術を組み合わせて次世代生活スタイルを実現させるシステムの展示であり、他国に対して日本製品が圧倒的優位に立って外貨を稼ぐことを期待させる展示が見られませんでした。
(自分が感じるイノベーション製品は、古くは自動車全般、飛行機、テレビ、電話。 近年の個別工業製品ではiPhone, Sony Walkman, Honda Super Cub等と思っています)
イノベーションを喚起する製品の開発は簡単では有りませんし、その製品がイノベーションを起すか否かは社会的な背景と併せて最終的にはユーザーが決めることです。
しかし、イノベーションを興す為の調査/研究開発はあらゆる分野に対して必要なことです。 その内容については企業の極秘事項なので発表できないのかも知れません。
例えば、今後増加する老人の生活支援、孤独死対策等の必要性増加は何も日本だけの傾向ではありません。 そして老人達を支援する若年層の負担を減らして彼らがもっと生産的
な仕事に集中できるとしたら、それは社会的にメリットがあり、新たな価値の創造であると言えます。 この様な社会インフラを世界的に構築できれば、それはイノベーションと言えます。
現在、日本が持っている工業技術を活用すればそれ程困難な技術とは思いません。 但し、習慣的宗教的な制約、価値感の違い等々の技術以外の社会的な制約を取り払って新たな
文化的な流れを作り、それを広く影響させるリーダーシップとグローバル感覚が日本人には不足している感じがします。 (これは一例としての老人対策についてのコメントです)
また、イノベーションを引き起こす為の概念は模倣されやすく、コアとなる特異の技術を持っていなければ日本の産業界には何のメリットを与えないことになります。
さて、今回のCEATECには「ライフスタイル イノベーション」ステージが開設されていますが、何がイノベーションなの??と思わざるを得ない内容と感じました。
【会場について】
前置きが長くなりましたが、CEATEC2013は、概ね下記の4っのステージに分割されていました。
@ 電子部品、デバイスが展示されている「キーテクノロジーステージ」
A 様々な生活シーンをシームレスにつなぎ明日の暮らしと社会の"体験を提案"する「ライフ&ソサエティステージ」
B ライフスタイルと社会のさらなる進化のために、"スマート"は技術提案から生活提案へと進化が求められていることをアピールする「ライフスタイル イノベーション ステージ」
C EV試乗スペース
まず、@の「キーテクノロジーステージ」からスタートしました。 このエリアには海外からの出品が多かったのですが、やはり東南アジアからの出展ブースには殆ど人が集まっていませんでした。
展示物の多くは最新技術が結集されていると思うのですが、似た様な物が多くて出展企業の出展意図が良く分かりません。 それでもOMORON、京セラ、アルプス、ローム、村田製
作所等々のトップメーカーが人員を大量投入して自社製品をアピールしていたのには好感が持てました。 特に部品メーカーは実利を取る「ビジネスの場」であることを強く意識していた
のかもしれません。 本来はそうあるべきです。 部外者の私から見ると、それでも単に「どのメーカーが何を主軸にしてアピールしたいのか良く分かりました」の程度かもしれません。
A とBは、それこそ焦点が定まらない「お祭り騒ぎです」。 今年は自動車メーカーや、建築会社からの出展も多く、特にこのステージは一部上場の大手家電が多いのですが相変わらず
4Kテレビや 大画面8Kテレビの出展や、規格の統一されていないHEMS(Home Energy Management System)を上段に掲げてアピールする様はユーザー不在のお祭り
でしかありません。 このステージは技術的というよりもマーケティング主導の展示が多いせいか、どちらかと言うと綺麗で刺激的なコスチュームのコンパニオンが説明しているブースに
人が多く集まっている様に見えました。
Cは殆どが日産自動車の無人ドライブLEAFの試乗コースと、セグウェイの様なTOYOTA Einglet やHONDA Uni-Cubの試乗エリアとなっていました。
前置きが長くなったので、以下簡単に写真と感想を説明します。
【写真と説明】 サムネール写真をクリックすると拡大します
(1) スマホ用の防水防塵ケース。 もちろんケースの外からでも画面の操作ができます。 自転車乗りやアスリート、屋外作業者に重宝しそうな感じです。
(2) ご存知、藤倉電線の超伝導のデモ。 ジェットコースター状に並べられた磁石の上を超伝導カーが滑る様に走ります。 去年と同じデモです。 何を言いたいのか不明。
(3) こんな類のコネクタが目的別にもの凄く多く存在し、しかも各メーカーが凌ぎを削っています。 何で製品の種類をこんなに細分化してコストを上げているのだろうか?
それに元々ローコストでありながら競争が激しい分野なので利益は少ないのではないかと思ってしまいます。 それとも特注で作ったものを拡販したいのか?
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(4) 水素ガスを使った燃料電池は以前からあったのですが、ローム社が出品したのは安定した固形型水素燃料を使った燃料電池です。 手前の黒いモジュールで
スマホが1回充電できるとのことです。多分、非常用の電池に使うのでしょうか? エコですが、まだ価格が高いので用途はこれからの課題でしょうね。
(5) 村田セイサク君、セイコちゃんです。 動きませんでしたが、敬意を表して写真を撮りました。
(6) 何だか分らない、冬のバスルームを温水ミストで暖める装置です。 お風呂に入る前に30秒くらいシャワーで浴室を暖めれば良いので我が家では不要です。
極寒冷地の北海道や東北では、風呂場も含めて暖房設備が充実しているので販売のターゲットエリアとして外しているそうです。
そうなると、推測するに息子・娘達から年老いた両親へのプレゼント需要がメインなのかな?
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(7) サンワサプライのフラットキーボードです。 面白いのはフラットなのに、押すと“ツン”とクリック感があります。 外食産業や水を扱う場所での使用に向いているのか?
(8) 同じ製品のパンフレットです。 ウリは「美しさが機能」で、水周りで使うと良いとは書いてはありませんでした。
(9) これもサンワサプライの スマホ用プロジェクターです。 何となく使えそうだけど、どの様な状況で使うのか? 会社の業務では使えないだろうな。
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(10) 同じ製品のパンフレットです。 詳細は画面をクリックするか、同社のWeb Siteを参照して下さい。
(11) 4K/3,840×2,160ドットの4Kパネルを採用したREGZA 4Kテレビの説明をしているのですが、黒山の人だかりです。 ステージ上の
女性達がとても魅力的でした。
(12) SONYのブースも4Kテレビと Androidスマホ/タブレットPCが花盛り。 去年展示されていたアクションカム「HDR-AS15」の様な遊び心満載
のアウトドア・コンシューマー製品は展示していなかった様だ。
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(13) 9月以降、株価が急騰しているアスカネット社から出品された「裸眼でも空中結像するサイネージ技術の進化版である3D結像専用プレート」のブースは大混雑。
今年のCEATECでは以前のメガネ3Dはすっかりと姿を潜めているが、この3D結像プレートは裸眼でもOKだけに将来が期待されている様だ。
一昨年の大手家電メーカーによる3D攻勢と比しても、しっかりした技術を持ち継続的にビジネスを展開している同社には好感が持てる。
(14) さて、今年の大手家電、住宅設備メーカーはHEMS(Home Energy Management System)を目玉に大きくブース展開をしている。 三菱電機ブースでは
スマートHEMSのデモを行なっており、自動化された家庭内電力マネージメントシステムの優位性をアピールしていた。 しかし、HEMSの通信インターフェイスや
仕様はTCP IPの上位レイヤーを標準化したECONET Liteを使うことでJSCAにより運用標準化が進められているが、現時点では各メーカ独自の仕様に依存
されている様に見受けられる。 住宅設備は一度導入したら長期間使用するので、規格が固まるまでは導入を控えた方が良いと思われる。 しかし、我が家には
SOLARパネルもエコ給湯も無いし、電気代もそれ程多くないし、家も狭いのでこんなものいらないなー。
(15) HEMSの分電盤です。ここでAC電源の入力制御とか各部屋への電力を制御します。 しかもスマートフォンからの制御や状態監視が可能です。
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(16) TOYOTAホームのHEMSデモです。 エアコン制御等の家電機器とのインターフェイスは現在標準化が進められているECONET Liteを使用しています。
(17) これはTOYOTAホームのHEMSパンフレットです。 勿論、ホームセキュリティも組み合わせています。
(18) パイオニアのブースはDJのデモでポップな感じで賑やかでした。 でも出展意図は良く分かりませんでした。
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(19) OMRONの出品で「貴方は何歳に見える?」を判定する OKAO VISIONは人気を博していました。 こんな単純なのが面白いですね。
(20)サンワサプライのAC,ソーラーの両方を使った蓄電システムです。 これなら晴天時でなくても継続使用できますね。 この方式の小型蓄電システム
はあまり見たことがありませんが、家庭の緊急時の使用には良いかも。 値段もソーラーパネルを除いて10万円以下だそうです。
(21)HONDAブースを眺めていたら、何やら目つきのキツイ男達が黄色いロープで我々をシャットアウト。 何事かと周りを見ると、何と新藤総務大臣
を始めとした政府のVIPがぞろぞろとやって来た。 VIPなので事故でもあったら困るので警備が厳しいのは分るが、新藤大臣も我々一般人の方
を振り向いて少しはニッコリしたらどうかねーと思うんだけど・・・緊張しているのかな? 少しでもそんなそぶりを見せてくれれば、好感度もアップするの
だろうけど、大きな花飾りを付けて、偉そうにそこのけみたいな感じだと良くないなー。 職務を離れれば普通の男なんだから。
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(22) 三菱電機ブースではGPSを上回る高度な測位が可能な準天頂衛星システムの模型を出展。'10年9月に技術実証用の初号機『みちびき』
(QZS-1)が打ち上げられており、'17年より3機を追加で打ち上げて4機体制で運用される予定だ。日本からオーストラリアの上空にかけて8の字に
回っている。GPSを補完する同じ信号のほか、センチメートル級の測位補正を可能にしてくれる補強信号も送れる。精度の平均値は水平で約2.16センチ
垂直で約7.13センチという驚異的な精度を実現できるそうだ。 Garminの新型eTrex20J,30Jシリーズでは『みちびき』の電波を使って測位が可能だ。
(23)SHARPのブースでは奥様が「ヘルスケア サポートチェア」にゆっくり座ってテレビを見ながら健康チェック。 その間に自動掃除ロボットがお部屋の掃除をする。
現実的ではないが、展示会ではこんな未来志向のデモも面白い。
(24)長崎発 Eサイクル社の電動自転車。 坂の多い長崎市内では人気のアイテムだが、通常の電動自転車よりは回生充電機能が充実しているのと、
モーターオフでの走行性能を改善して走行距離を長くしているそうだ。 もう少し軽いと良いのだが。
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(25)同様にEサイクル社の折り畳み自転車 ISORA(アイソーラーでは無く、イソラと読む)。 でもバッテリを含めると30Kg程の重量なので、折り畳めるメリットは
格納スペース位か?
(26)ご存知、Back to the Futureで有名になった「デロリアン」。 単なるEVの制御回路のデモ車両でした。
(27)4Kテレビを使ったドライビングゲーム。 当然試して見ましたが、脱輪せずに走るのが一苦労。 でも高画質のお陰で遠くのコーナーも感覚的に把握しやすく
迫力満点。 観客も沢山居ましたが充分楽しめました。
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(28) HONDAのUNI-CUB。 ロディオマシーンの様に跨り、体を傾けて制御する電動カー。 人気があるので早めに予約しないと試乗できない。
(29)あのセグウェイかと思いきや、何とこれはTOYOTAの Wingletと呼ばれる電動カー。 全くセグウェイのパクリとしか思えない。 性能とか取り回し
は大幅に改善されていて乗り易いと説明され、セグウェイとは全く異なると説明されたが、大メーカーのTOYOTAがパクリをしたとしか思えない。
恥ずかしいから、こんなの止めてくれないかな。 TOYOTAも何処かの国と一緒だなんて言われるよ。
(30)TOYATAが結構力を入れていたのが、小型電動車。 二人乗りもある。 説明員に聞いたところ、昨年試乗した際に指摘したクリープ(ブレーキ
から足を外すとゆっくり動く機能)が無くてバックの際に怖かった件は、既に改善されているそうだ。 将来はお世話になりそうな車だ。
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(31) ご存知の日産リーフの自動運転システムのデモ。 これも早くから予約しないと試乗が出来ない。 発展途上と言えども将来的には必要な研究だ。
(32) 午後3時過ぎになると、足が痛くなり体も疲れてて退場することにした。 この時間でも沢山の入場者が押し寄せている。 CEATEC Japanは
まだまだ、日本の電子技術の中核となる展示会と感じました。 でも今回のCEATECの出品が各メーカーの本気本音の出品であれば、工業立国
日本も危ないかもね。
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以上