2012122日に発生した中日本高速道路 笹子トンネルの天井落下事故から1年が経つ。 あれから抜本的な対策が行なわれているのだろうか?

国土交通省主催の「トンネル天井板の落下事故に関する調査・検討委員会」の報告は同省のホームぺージを見ても528日から何の更新もされていない。

同日の検討委員会のまとめでは「・・・することを望む」「・・・を期待する」「・・・べきである」の表記に終始している。 国土交通省の委員会が半年以上の時間を

かけて導き出した結論とは思えない。 まったく時間の無駄遣いどころか、他のまともな対策委員会の設立を妨害する為の泡沫委員会と見られても仕方が無い

活動内容と閉幕?である。 せめて「これこれをこの様にするのでXX対策委員会が中心になって全国のトンネルの調査を行う」 程度の発表があっても良いの

ではないか? しかし、その後は何の指針も発表されていない。

 

 そんな想いにかられていたら毎日新聞に下記記事の掲載があったので、メモとしてこの日記に残すことにした。

その内容を見ると関係者は反省ばかり。 人の命を預かる工事の担当者とは思えない低レベルの発言に終始している。

それも原発同様に下記の様な間違った認識が経営者、政治家の間に蔓延っていて、純粋な技術的見解を軽視する風潮があるからと思います。

もちろん、民営化に伴ってリターンを重視する投資家の意見に影響されていることもあると思います。 

(書き方は誇張されていますが、こんな感じであることは間違いないと思います)

 

     ●新しい技術と工法は工期とコストを大幅に改善するので、とにかく活用すべきだ。

●こんな素晴らしい技術、工法に深い疑いを抱く技術者は全体の計画や利益にとって妨げになる。 (結果として頭の働かない技術者しか残らない)

●とにかく道路工事費用と償却プランが固まればどんどん作って行こう。 維持管理費用は料金収入から捻出すれば良いでしょう。(メンテナンスが出来ない)

 

記事に出てくる関係者は単純と言うか思考力が無いと言うか、読んでいると怒りがこみ上げて来るので今回は記事をメモるだけで我慢します。

 

 

--【以下、毎日新聞の記事】---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20131201-00000010-mai-soci

<笹子トンネル>新工法過信、設計に事故の芽 崩落から1年

毎日新聞 121()1015分配信

 

 山梨県大月市の中央自動車道・笹子(ささご)トンネル天井板崩落事故から2日で1年。老朽化したインフラが利用者9人の命を奪った背景を追うと、

安全性より効率を優先した工法の採用や点検を考慮しない設計など、事故の「芽」が約40年前の着工時に隠されていた。危険性に気づいた他の道路

事業者が対策を講じる一方で、旧日本道路公団や中日本高速道路がリスクを見過ごし続けていた実態も浮かび上がってきた。

  「一度差したら絶対抜けない」。1972年の笹子トンネル着工を控え、山梨県内の旧道路公団事務所で開かれた学習会。元職員の小沼俊彦さん

(69)は技術職員の言葉に「すごいものができた」と驚いたことを覚えている。

  コンクリート壁に穴を開け、接着剤入りカプセルとボルトを押し込むと、内部に接着剤が満たされて固定される「接着系アンカー」工法。コンクリートとボルトを

一体成形する工法に比べ、極めて簡便だった。欧州生まれの新工法のカタログには「変質、老化の心配はない」と記されていた。

  「中央道は東名高速道より建設が10年遅れており、現場も急いでいた」と小沼さんは振り返る。笹子の天井板設置は、わずか1年の突貫工事。

新工法が採用されたがカタログは不正確だった。業界団体によると、69年に国内で製造が始まったばかりで、長期耐久性は証明されていなかった。

事故はこの接着部が施工不良や劣化で引き抜けたことが原因と見られている。   設計にも事故の芽があった。

設計に携わった旧公団OBは「笹子は岩盤が固く、換気用の立て坑をトンネル上部に掘るのが難しかった」と説明する。ならばと発案されたのが、天井板で

トンネルを仕切り換気用のスペースにする設計だった。

全長4.7キロの笹子トンネルには排ガスがたくさんたまるため、換気用のスペースを大きくしなければならなかった。事故が起きた現場は天井板から最上部

までの幅が約5.3メートルと、他のつり天井式トンネル(約0.4〜3.8メートル)に比べ、群を抜いて広くなり、天井板の一部として縦に設置された

隔壁も大きく重くなった。

この設計が事故の伏線となった。点検しにくいという側面が考慮されていなかったのだ。中日本高速はハンマーでたたいて異常がないか調べる打音検査を

最上部では事故まで12年間実施せず、5メートル下からの双眼鏡による目視にとどめていた。「当時は造ることが第一。天井板はしっかり留めれば

大丈夫という感覚だった。ただ、それは過ちだった」。元職員は唇をかんだ。

笹子トンネル建設工事の責任者だった元公団職員の周佐光衛さん(83)は「大事なのはコミュニケーションだった。 天井板を担当する設備の人間、

維持管理の人間とお互い議論していれば……」と悔やむ。

縦割り組織の中で、置き去りにされたものは何か。小沼さんは言う。「当時の私たちにはリスクへの想像力が欠如していた」

 

  ◇民営化、補強費は後回し

 管理上の盲点をはらんだまま開通した笹子トンネル。だが、事故までの35年間、リスクに気付くチャンスは何度もあった。

1999年、山陽新幹線やJR室蘭線のトンネルでコンクリート片が落下する事故が相次いだ。首都高速や阪神高速でも鉄板や標識が落ち、

社会問題化し、トンネル天井板にも落下防止ワイヤを付けるなどした。

旧道路公団も笹子トンネル上り線で2000年に臨時点検を実施。天井板のボルトなどの不具合219カ所を確認したが「支障はない」と落下

防止策は取らなかった。01年にもボルト引き抜き試験で接着剤の定着不足などを見つけたが、「構造的に問題ない」と看過した。 

「目に見える問題が起きていないうちは大丈夫という空気があった」。元公団職員はメンテナンス軽視の組織風土を振り返る。そして「それを決定づけた

のが民営化だ」と指摘する。

01年就任の小泉純一郎元首相の下で進められた旧道路公団の民営化。05年の民営化までの3年間に管理コストの3割削減が打ち出された。

中日本高速管内でも道路の維持・補強費は00年の約1300億円から05年には約610億円に半減。国土交通省によると、全国の

高速道路で補修が必要な件数は05年の4万7400件から11年は55万4800件に増加。補修ニーズが増えるのに管理コストは削られ

るのが実態だった。

民営化後の中日本高速は、老朽化によるトンネル設備の危険性に気付いていた。08〜09年に有識者を交えて開いた社内検討会。資料には

「鋼製部材が腐食し落下するなど事故の発生が懸念される」と明記されていた。それでも、天井板が放置されたのはなぜか。 笹子では09年の換気

設備更新を機に天井板を撤去する計画を検討しながら取りやめたことが事故後、明らかになった。検討事項には工事費も含まれていた。 事故後の

笹子天井板撤去費用は55億円に上った。

笹子事故は、管理をないがしろにしたインフラ整備に警鐘を鳴らした。08年から建設業者や自治体職員を対象にメンテナンス専門家の育成を図る

岐阜大の高木朗義教授は「これまでは造ることは考えても保つことを考えてこなかった。安全にはコストがかかると認識すべきだ」と指摘する

【片平知宏、春増翔太】

 

◇笹子トンネルの整備を巡る動き

1969年 中央道・大月−勝沼間の整備計画決定

  72年 笹子トンネル着工

    76年 天井板工事着工

    77年 笹子トンネル開通

2000年 足場を組んだ臨時点検で天井板ボルトなどに不具合219カ所

    01年 ボルト引き抜き試験で接着剤の定着不足確認

    05年 旧日本道路公団が民営化、中日本高速道路設立

    06年 米・ボストンでトンネル天井板落下、2人死傷

    09年 天井板撤去を一時検討したが「通行止めなど社会的影響」を理由に後に取りやめ

    12年 9月に定期点検。足場は組まず頂上部の打音検査をせず

   12月2日に崩落事故発生

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最終更新:121()125

以上