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今年も千葉市穴川にある『独立行政法人 放射線医学総合研究所(NIRS)』の一般公開があるとのことで前回(‘12年10月21日)
に見学できなかった重量子がん治療装置 (HIMAC : Heavy Ion
Medical Accelerator Chiba)をひと目でも見たくて行って来ました。
このHIMACで使われている周長130mのシンクロトロン(重粒子加速器)で重イオンを光速の84%程に加速して患部に照射し、がん細胞
を無効化する療法はこのNIRSが開発し、現在でも世界をリードしているのだそうです。 さて、少々緊張気味に正門をから受け付けに向か
います。
(1) 意外とセキュリティチェックは緩い様です。 特にボディチェックも無く、案内に従って総合受付に向かいます。 ここで住所、氏名を記入して
パンフレットや入館カードの交付を受けます。 子供の姿も多いですね。 確かに子供向けのアトラクションも多数開催されています。
(2) 総合受付を入ってすぐの部屋では自然界の放射線のリスクや、線量の測定、そして実際に微量のガンマ線や中性子がアルコール蒸気の
中を飛んでいる姿を見せてくれます。 そしてその放射線が人体に与える影響についても説明員がパネルで説明をしてくれます。
(3) その中でも面白いのはこのグラフです。 何と!一番元気の良さそうな独身男性が「損失余命日数」が一番多いとは意外です。
この統計は米国で行なったそうですが、独身男は生活が安定していないからなのでしょうか?
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(4) 次にPET(Positron
Emission Tomography)を使った医療の説明を受けます。 今回はPETを使った認知症発見の研究について
の研究成果を展示していました。 PETはレントゲンと異なり無害なレベルの放射性物質と糖や特定の組織に吸着し易い分子を組み
合わせた薬剤を体内に取り込み、その放射性物質を画像とし表示する装置です。 例えばがん組織は糖の消費が活発なので糖と組み合
わせると、かなり正確にガン組織の位置や大きさを判別出来るそうです。 3D方式のPETとMRIを組み合わせた装置も使われています。
(5) 「認知症の場合は脳内にアミロイドやタウと呼ばれる異常蛋白の量や広がりが多くなる」ことが世界で始めて可視化された実測データとして
取り込むことに成功したそうです。 治療方法は現在研究中とのことです。 要はこの研究所はまだ日の目が出ない研究の宝庫なのです。
(6) この写真はPET説明用の模型です。 MRIの様に放射線センサーが並んでいる筒の中で患部の調査をします。
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(7) ご存知テレビのニュースでよく見る放射性物質に対する防護服です。 不織繊維で出来ていて紙の様な服です。 当然使い捨て。
(8) これは頭からすっぽりとかぶる放射能防護マスクです。
(9) REMAT(Radiation
Emergency Medical Assistance Team)、日本語では「緊急被ばく医療支援チーム」の車両には、この様に
防護服や放射線計がセットになって、いつでも出動出来る様に装備されています。
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(9)
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簡易型体表面汚染モニタで私の放射線汚染度を測定して戴きました。 一昨年に続き、異状はありませんでした。
(11)食品等を通じて体内に被爆した場合の対応についての説明がありました。 あるレベルまでは一定の自浄作用があり、時間と共に
体外に排出されます。 また、排出を促す薬もあります。 怖いのは中性子や許容度を越える強力な放射線を浴びた場合です。
この場合、即死はしませんが体内のDNAが破壊され、細胞の再生が行なわれなくなります。 細胞の寿命は体の部位で異なります
が、人間が命を失うまでにせいぜい2-3日程度だそうです。 怖いですね。
(12)またまた生々しい画像です。 NIRSは放射線医療では最先端の病院を持つので、福島原発事故の際も、かなりの人数の患者が
搬送され、ここで治療を受けたそうです。 近くに住んでいる我々はそれだけ恵まれているのか・・・いやいや、そんな事態になって欲しく
ないものです。
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(11) (12)
(13)頼もしいREMAT(Radiation Emergency Medical Assistance
Team)の救急車。 福島原発事故の際は、これらの救急車
やヘリコプターで被爆患者達をこの放射線医学総合研究所まで搬送したそうだ。 日本国内には放射線被爆に対応可能な病院は幾
つかあるが、最終的にはこの放射線医学総合研究所で対処するそうです。
(14)目玉のHIMAC (
Heavy Ion Medical Accelerator Chiba ;重量子がん治療装置)の入口には面白い格好で案内している人が
いました。多分この人も研究者(放射線技術かお医者さん)と思いますが、次世代を担う子供達が興味を引く様に、いろいろと工夫して
アピールしている様子が見て取れます。
(15) HIMACの全容です。 リング直径約42m、周長約130mのシンクロトロン(円形加速器)が目を引きますが、今回はこの全てを
見せてくれるそうです。 こんな機会は滅多にありません。 HIMACについては訳のわからん私の説明より こちらをクリックして下さい。
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(16)ここはHIMACで加速された重粒子線を患者に照射する部屋です。左側から中央の四角い箱の中を通過して重粒子が飛んで来て
右側のパネル側に抜けて行きます。
(17)この白い樹脂に空いている穴は重粒子を照射する患部の形を3Dで再現した型です。 即ち、先のPET検査で腫瘍の位置、大きさ、
形を正確に把握してメス型として作成したものです。 HIMACはこの型に沿って正確に重粒子を照射してがん細胞を破壊するそうです。
(18)ここはHIMACの治療ベッドです。 正面の丸い穴は水平ビームの照射口、上にあるのは垂直ビームの照射口です。
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(19)HIMACの中核をなすシンクロトロン室への入口は厚い鉄の扉で仕切られています。
(20)これがイオン発生源です。 原子をイオン化する方法はレーザー光を当てたり電子を直接打ち込んだりするそうですが、難しいことは
別にして、とにかく「電子を受け取った原子は負電荷に帯電して陰イオンとなり、電子を放出した方は正電荷に帯電して陽イオンとなる」
そうで、これを加速器に入れて光速の84%程度まで加速するそうです。
(21)同様にイオン発生源の装置です。 難しいことを考えて理解しようとすると頭が痛くなる世界です。 単純に見るだけでも価値があります。
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(20)
(21)
(22)まずは発生したイオンを直径0.6m、長さ7.3mの線型加速器に送り、ここで電界をかけて加速して行きます。
(23)これがシンクロトロン本体です。 こんな凄い設備は初めて見ました。 本来は素粒子の研究で使う設備ですが、これを医療に
使う技術を開発したのは、このNIRSが最初であり、世界をリードしているそうです。
(24)シンクロトロンには沢山のコイルが設置されています。 イオンを加速させるのは高周波電場を制御して行なうそうですが、これら
の巨大な磁石はイオン(重粒子)がシンクロトロンの内部を孤を描いて飛んで行く為の方向を制御するものだそうです。
光速の84%で飛んでいる重粒子の軌道を制御するのはどの様に行なっているのでしょうか? またまた頭が痛くなります。
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(23)
(24)
(25)(26)(27) 同じくシンクロトロンの写真です。 UFOの中はこんな感じなのでしょうか?? (26)は水を使った冷却装置だそうです。
何故水を使うのかって? ワカリマセン!!
(25)
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(28)前回に引き続き別棟の「サイクロトロン」を見学に行きます。 サイクロトロンも同じ加速装置なのですが高周波電場と強力な磁力線で
イオンを回転させながら加速させるところがシンクロトロンとの違いだそうです。
(29)その為、発生する磁力線の強さは半端では無いので、サイクロトロン装置を格納する部屋の壁の厚さが3m以上。 部屋のドアの厚さ
(黄色い部分)も写真の通り3m以上あり、扉はレールの上をスライドする構造になっています。 ここでは各棟の研究室に各種イオンを
注文に基づき発生させて送り込んでいるそうです。
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(29)
(30)さて最後の展示棟に入ります。 ここでは埃対策なのか写真の様な靴カバーを履かなければ入場させてくれません。
(31)写真は説明パネルだけですが、ここではマイクロビームを発生させ、そのビームを細胞毎に狙い撃ちで照射させること
が可能なのだそうです。 例えばある細胞にはビームを照射させ、その隣の細胞にはビームを当てない様な制御をして
放射線がDNAに与える影響の調査とか、治療の為にがん細胞を狙い撃ちにしたりすることが出来るそうです。
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(31)
★★★★ 今回の見学も難しすぎてうまく説明出来ません。 でも最新技術を目の当りにして驚きのことばかりでした。 ★★★★
★★★★ 私たちが住む千葉市にも世界に誇れるこの様な素晴らしい研究設備と、最先端医療設備があるなんて ★★★★
★★★★ 何となく嬉しくなって帰途に付きました。 あと40年若かったらこんな仕事をしてみたかったな 。 ★★★★
以上