(下のサムネール画像をクリックすると拡大します)

 

2年前にリア側ハブのオーバーホールを行なってから11,080Km走行しました。使っていたグリースは回転性能の良いフィニッシライン

のセラミックグリースですが難点は耐久性。 先日、前回のオーバーホールから5600Km走行したフロントハブをオーバーホールしましたが

その際のグリースの状態から考えるとリアハブも早急にオーバーホールが必要と判断し、少々遅れましたが本日実行しました。 

但し、リアハブ自体は特に問題は顕在化しておらず、ゴロゴロ感やノイズ、回転が渋くなった等の感覚はありません。

 

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(1) まず、シマノのパーツマニュアルを眺めて、部品の組み方や位置、ワッシャーの位置や向きをしっかりと頭に入れます。 でも作業中も

傍に置いて時々確認した方が良いと思います。

 

(2) 必要なツールや油脂をトレイに並べます。 ダイソーで買ったこのステンレストレイはとても便利です。 我が家では自転車や車の整備

以外に工作用や台所用に結構沢山使っています。 ハブスパナは WH-7801リアの場合17mm2枚使います。

ベアリングの洗浄用の茶こし、カセットスプロケットの取付け/取外しツールと最大計測値105N・mのプリセット形トルクレンチ、

そしてScott Ragsのペーパータオル。  肝心のグリースですが、ツーリング走行が多いので今回からは耐久性と防水性能が優れた

Dura-Aceグリース (チューブタイプ)を使うことにしました。 チューブタイプはグリースガンが不要なので、とても便利です。

 

(3) ホイールのクイックリリース シャフトを抜いた後、カセットスプロケットを外します。  先週にロックリングを規定上限値の48N・mで締め

付けたので思い切り力をかけないと外れませんでした。 やはりこれ程の強烈なトルクは締め付けや取り外しの際にスポークやリムに

与える負荷が大きすぎる感じがします。

 

  

 (1)                                               (2)                                                    (3)

 

 

(4) ハブキャップを外した後に17mmのダブルナットを外すと、リア・アクスルシャフトがフリーごとすっぽりと抜けます。

 

(5) 外したナット2(左上)、ワッシャー、左側のベアリング玉受け、そしてフリーホイールが付いたままのリア・アクスル シャフトです。

フリーホイールはハブに対して駆動力を伝えますが、アクスルシャフトに対しては伝えないのでシャフトを軸にして両方向共に回転する

構造になっています。 (写真(14)のシールドベアリングおよびその裏側にあるスリーブがこの回転軸になります。)

 

(6) 左側のハブベアリングが現われました。 セラミック グリースが少々乾き気味で限界に近い状態でした。

 

  

 (4)                                                 (5)                                                  (6)

 

 

(7)  アレンレンチでカップナットを外すだけでフリーユニットがアクスルシャフトから分離します。 逆ネジなので注意!

 

(8) フリーユニットが外れました。 実はフリーユニットを外すにはアクスルシャフトをハブから外す必要はありません。 写真のカップナット

     を外すだけでOKの筈です。

 

(9) フリーをラチェット側((8)の写真の左側)から撮った写真です。 意外にラチェットピンの出っ張りが少ないです。

 

   

(7)                                                   (8)                                                  (9)

 

 

(10)フリーのラチェットピン3個とこれらを押さえているリングスプリングを撮ってみました。 このリングスプリングでラチェットピンを押さえ付け

ると、写真(9)の様にピンが起き上がって写真(12)(15)のハブ側のギザギザに引っかかり駆動力がホイールに伝わる構造になっています。 

ペダルを止めての走行時は”ジー”と音がしますが、それはラチェットピンが順方向で空転する為にギアの山を越える際に発するメカ音です。

高速ダウンヒルの際にはラチェットが空転しますので、アクスルシャフトとフリーユニット、そしてこのラチェットピンが凄い勢いでこすれているの

で気が抜けません。 但しこの時は空転状態なので機械的な負荷は大したことはありません。

 

(11)こちらがフリーのラチェット部分が入る側のハブ・ハウジングです。 手前のO-Ringはフリーラチェット部とハブベアリング部に塗布する

グリースが混ざらない為のシールド部品です。 奥にハブベアリングが見えます。 (Shimano指定ではこれらのグリースは異なるものです)

 

(12)ハブベアリングを外した写真です。 奥に見えるのはベアリングの玉当り(カップ)側です。 グリースの量と粘度は問題無い様です。

 

  

(10)                                                (11)                                                  (12)

 

 

(13)ハブベアリングはリテーナー()から外して洗浄します。 今回は洗浄スプレーの勢いでベアリングが吹き飛ばない様に新兵器を使いました。

ダイソーで見つけたカゴ状の茶漉しです。 特にペダル等の小さいベアリングを洗浄する際には絶大なる威力を発揮します。

 

(14)フリーハブの内側も綺麗にします。 但し、写真のシールドベアリングに洗浄液が滲み込まない様に注意が必要です。 シマノの説明書

にはこのシールドベアリングについての記載が無いし、WH-7801のマニュアルには分解するなと書いてあるのでここまでが限界です。 

(Do not attempt to disassemble the freewheel body, because it may result in a malfunction.)

この写真はフリーハブのカセットスプロケット側(外側)から撮ったものです。

 

(15) こちらの写真はリアハブ ハウジング(スポーク側)の中心側(内側)から撮ったものです。 手前がラチェットギア、奥がハブベアリングの玉当

(カップ)側です。

 

  

(13)                                                  (14)                                                  (15)

 

 

(16)カセットスプロケットを取り付ける切込み付きのフリーホイール・ボディを徹底的に清掃します。 但し、写真(14)のシールドベアリングに

洗浄液が入り込まない様に細心の注意を払います。 私はこの部分の清掃はブラシとウエスしか使いません。 

 

(17)これがリアハブのハウジングを除いた全ての部品です。 購入後、約35,000Km走行しましたが状態は悪くありません。

 

(18)ベアリングボールを押し込んだリテーナー、玉当り、その他各所にDuraグリースを塗布します。 今回は耐久性と防水性能を重視して

セラミックグリースではなくてShimano Dura-Aceグリースのチューブタイプを使いました。

 

  

                              (16)                                                   (17)                                                  (18)

 

 

 (19)カセットスプロケット側の玉当りと、ラチェットのギザギザギアにDuraグリースをたっぷりと塗りこみます。 Shimanoの指定では回転負荷の

高い玉当り部分と、フリーハブ部分では異なるグリースを使用することを推奨しています。 フリーハブ用は 「Shimano Special Grease

for Freehub Body (P/N:Y-3B980000)」と長ったらしい名前のリチウムベースのグリースですが、粘度が通常のDura-Aceグリースと

比してかなり低くなっています。 また、他のグリースと混ぜてはいけませんとも書いてありますが、実装すると少なからず混ざってしまいます。

 

フリーハブ専用グリースを指定する理由は不明ですが、多分ラチェットピンとフリーのギザギザ間の動作をスムーズにする意味合いと、写真(12)

の穴の奥に見えるフリーボディの軸受メタルとアクスルシャフト間の摺動抵抗軽減、そして写真(14)のシールドベアリングの内側にある筒状の

スリーブとアクスルシャフトの摺動抵抗軽減が目的と思います。 平たく言うと「ペダルを止めたときの回転抵抗を少なくする為にアクスルシャフト

との摺動部分に軟らかいグリスを使う様に指定した」 ことと思います。 

よくホイールの回転の良さを評価する為に「後輪を持ち上げて何分間回転し続けた」と言われますが、実はメインのベアリングの精度以外に

こんな部分も大きく影響していることを忘れてはいけません。

 

今回、私の場合は自己責任で全て同じDura-Aceグリースを使うことにしました。 

理由は@手元に無い A特に分けていないプロショップも沢山ある B2種のグリースが混ざるのはいやだ C効果が疑問 等々です。 

そもそも、このフリーハブグリースはどの部分にどの様に使うのか全く記載がありません。

それにしても写真のグリースの量が多すぎますね。 写真撮影の後、手前のギザギザ部分のグリースをかなり拭き取りました。

 

(20) フリーハブと反対側のベアリングを挿入します。 グリースは後から垂れ出て来る可能性がありますが、タップリと使った方が安心です。

 

(21)さて、最後の難関の玉当りの調整ですが、きつすぎてはいけません。 多少ガタがある程度が一番軽く廻りますが、ガタが無い様に調整

します。 理由は617 日のフロントハブ・オーバーホールの日記にも記載した通りです。

   

    

                          (19)                                                (20)                                                        (21)

 

 

(22) カセットスプロケットを取り付ける前にトルクレンチの締め付けトルクを設定範囲(30N-50N)の中間の40N・mにセットしました。 

(1Nm=0.10Kgf・m=10.20kgfcm)。 そしてカセットギアをセットしてロックリングを閉めつけます。 グッ・・・カチン あれっ? 

意外に軽く設定トルクに達してしまいました。 そこで再度締め付けトルクを45Nmに設定して再度締め付けます。 

するといつもより、キツク締め付けた時点で、トルクレンチが カチン と音を立てて設定値に達したことを知らせました。

やはり、今までの自分の勘では40-43Nm程度のトルクで締め付けていたと再認識しました。

 

(23) 特に必須項目ではありませんが、私はホイールメンテナンスの一環として、「ホイールの振れ」と「スポークの張り」も確認しています。

大雑把ですが、張りが他のスポークと比して突出していないかを確認する程度です。

 

(24) 英語版ですがWH-7801 Service Instructionはメンテナンスの際に有用なので添付しておきます。

 

     

                             (22)                                                 (23)                                             (24)

 

 

 

 過去のヒルクライム、ロングライド、サイクリングにはフィニッシラインのセラミックグリースを使い続けて来ましたが

 WH-7801ハブとの組み合わせは良好の様で特に不満はありませんでした。 今回は耐久性と防水性能

 を期待して初めてのDura-Aceグリースの使用してみましたが、自己責任の部分もあるので5000km    

 程度走行した時点で再度、グリースの状態を確認してみようと思います。                                    

 

以上