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千葉ベイサイド・サイクリングクラブの若手仲間であるIさんからGarmin Edge705 のUSBインターフェイスが不調との話があり、
「一寸見てみたいな」 なんて話をしたら、早速修理を依頼されてしまいました。
多分、コネクタとマザーボード間の圧接ピンの接触不良かなと思っていたら、何とUSBコネクタ(本体側メス)自体のピンが折れて
しまったらしい。 うーん・・・そうすると結構面倒で表面実装方式のUSBコネクターを使っているとしたら難易度はかなり高くなる。
問題はパーツの調達だと心配しながら、引き受けてしまった以上はとにかく預って様子を見ることにした。
★★★★★★★★ まず下調べ ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
(1) まず、背面カバーを外してUSBコネクタの様子を見ることにします。 裏側のT5トルクス6本を外すと簡単に分割出来ます。
(2) バッテリーケーブル コネクタ(白)と マイクロSDカードに接続されるフラットケーブルを外してケースを分割します。
この構造であれば走行中の振動で電源が落ちる可能性が低そうです。 但し、USB経由で補助電源を使う場合には少々
心配な感じがします。
(3) 写真左上の黄色い四角で囲まれた部分にUSBコネクタをハンダ付けしたサブ基板がネジ2本で固定されます。
思ったより簡単に分割出来ました。
(1)
(2)
(3)
(4)
外したUSBコネクタを確認してみると、何と2番目のピンが折れていて、ピンセットの先で摘んだらポロリ・・・と取れてしまいました。
大変だー。 もうこれで最後までやらなきゃダメダ。 汗がタラリと落ちて自分が壊してしまった様な気分になってしまいます。
(5)
まず、USBコネクタのピンに接続される配線を調べます。 特に必要が無い作業ですが、これが私の性格です。
折れたのは2番ピン(-D)でUSBのデータラインです。 従ってUSB接続が出来ない問題と一致します。
(6)
裏側にある本体との接続部分の接点の並びもメモしておきます。 こちらには裏ブタのブザーへ接続される2本の信号線が含
まれます。 この接点が本体から出ている金メッキされた圧接ピンと接触する訳です。
(4)
(5) (6)
(7) 本体マザーボードから立ち上がっているこの金メッキされた圧接ピンが(6)の接点と接触して電気信号を流す訳です。
自転車の振動を考えると少々心元ない感じがしますが、両方とも金メッキされているので良しとしましょうか。
(8) 念の為、標準USBとMini
USBケーブル側のコネクタ(Male)のピン番号と信号線名をメモしておきます。
USB2以下の場合、標準USBコネクタの接点数は4、Mini
USBコネクタは 5です。
(Edge705はMini USBなので5接点使っています。 一部のGarmin製品ではUSBから充電中にGPS機能が
使えないことがあります。 その場合は Mini USBケーブルのPin4(ID)と Pin5(GND)をショートさせる必要があります)
(7)
(8)
★★★★★★★ パーツ調達と修理作業 ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
(9) さて、壊れているMini USBコネクタを調達しなければなりませんが、これが特殊な形をしていてMade
in Japanでは無さそうだし、
国内では流通していない様です。
困りました。
そこで自動車のメンテナンスと同様に eBayで調べてみると・・・・・あった!! 何だGarminのパーツが新品、中古を問わず沢山
掲載されているではないですか。 USBコネクタは ここ をクリックして下さい。 (ハイパーリンクなので有効期間外の保証はしません)
その他パーツは、 http://www.ebay.com/ のトップページで “Garmin Edge705”をキーワードにして検索して下さい。
勿論、その他のモデルでも検索可能です。
(10)
今回はラッキーなことに中古ですが背面カバー一式で何と $2Xで売っているのを見つけました。 早速Iさんにメールで知らせると、
何と彼はこれを値切って $1Xで購入してしまいました。 (ハイパーリンクなので有効期間外の保証はしません)
日本の総代理店の『いいよねっと』に頼らなくても自分で修理する道が開けました。 自分としても大きな収穫になりました。
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(10)
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背面カバーアッセンブリーが入手出来たのでそのまま使っても良いのですが、背面カバーには製造番号のシールが張られているので
サポートを考えるとそのまま使えません。 仕方がないので、やはりミニ基版付きのUSBコネクタを移植することにしました。
作業に必要なツールを用意しました。 @クリーニング用アルコール、Aハンダ吸引ハンドポンプ、Bハンダ吸着メッシュワイヤ
C
液体フラックス(ハンダが流れやすくなります)、D購入したGarmin背面カバー、E拡大スコープ 等々です。
(12)
作業は簡単です。 ミニ基板から出ている灰/紫のブザー線をブザー側で線を外します。 USBコネクタの周りの赤枠は防水
ゴムシールです。
(13)
外したUSBミニ基板を製造番号付きの背面カバーに移植してハンダ付けをします。 線が動かない様にセロテープで養生すると
作業がやり易いです。
(11)
(12)
(13)
(14)振動の多いロードバイクで使用するので、半田付けの部分で断線しない様に線の被覆部分を含めて接着剤で養生します。
更に、ミニ基板を2本のスクリューで背面カバーに固定します。
(15)ステップ(2)で外したコネクタ類を接続してから注意深く背面カバーをかぶせ、T5トルクス6本をネジ止めして作業終了。
この際、マザーボードから出ている8本の圧接接点の先と、USBミニ基板の接点が少しこすれる様に接触させることが
大切です。 (尤もそうなる様に作られていて、金接点の表面同士が少し削れて接触抵抗を減少させる効果があります。)
祈る様な気持ちで電源をオンにするとGPS衛星を補足して地図が表示されました。 感動の一瞬です。
(16)USBケーブルをPCに接続すると自動的に「デバイスが見つかりました」 のメッセージが表示されてUSBインターフェイスの
正常性の確認が取れました。 この後に、Edge705のメモリやログが表示されることを確認して作業終了!!
今回のトラブル修復は部品さえあればそれ程
難しくありませんでした。
(14)
(15)
(16)
★★★★★★ おまけ編 ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
特殊なGarmin用USBコネクタの調達方法も分ったので、今後同様なトラブルが発生した場合にはコネクタ交換で対処する機会
もあると思います。 そこで、USBミニ基板から壊れたUSBコネクタを外してミニ基板を再利用可能状態にすることにしました。
でも、ミニ基板には金属製のコネクタハウジングやUSB端子が表面実装でハンダ付けされているので、ハンダこての熱によってプリント
パターンが剥がれてしまう可能性が大きいので作業は難しそうです。
感触ですが、綺麗にコネクタが外すことが出来れば、新品のUSBコネクタの取り付けは、それ程難しくなさそうです。
(17)まず、水で湿らせた こて先クリーナーでハンダこての先を綺麗にします。 以前にも書きましたが、これはとても大切な作業です。
こて先に古ハンダが付いていたり、剥がれ易い酸化皮膜が残っていると、ハンダ付けの際に不純物によって綺麗にハンダが溶けて
くれません。 また、細かい部分にハンダ付けする際に隣のプリントパターンとの間にブリッジが出来てしまう可能性も高くなります。
(18)ハンダ箇所に液体フラックス(松ヤニをアルコールで溶かしたものでも良い)を塗布し、ハンダ吸着メッシュワイヤを押し当てます。
フラックスを塗ることでハンダの流れが良くなり吸着メッシュワイヤに吸着しやすくなります。 このワイヤは秋葉原のパーツショップで
購入可能です。 熱に強い部分のハンダ除去の場合はハンダ吸引ハンドポンプを使っても良いでしょう。
そうそう、部品が小さい場合は写真の様に両面テープに貼り付けると、楽に作業が出来ます。
(19)こんな感じでワイヤを熱してからハンダを除去したい部分に押し当て、その上をコテ先で熱します。 熱しすぎるとプリントパターンが
熱破壊し、足りなければ半田が溶けずにプリントパターンに熱の攻撃をしてしまいます。 便利ですが、この加減は結構難しいです。
(17)
(18)
(19)
(17)金属製のコネクタハウジングのピンが2ヶ所だけプリント基板にスルーホールしています。 このピン2本のハンダを除去出来ればその後は
少し楽になります。 その他の表面実装部分のハンダやUSBコネクタの端子部分をハンダ吸着メッシュワイヤに吸着させて、ハンダ層を
可能な限り薄くしておきます。 金属ハウジングピンのハンダが概ね除去できたらシャーププライヤーで金属製のピンをゆすりながら引き
抜きます。(細心の注意が必要) ピンが引き抜けたら、金属ハウジングの接合面を写真の様に開いてしまいます。
(18)残っているハンダをカッターナイフの背の部分やスクレーパー(先の尖ったピン)で削ったあと、シャーププライヤーで金属ハウジングを軽く
ゆすりながら引き抜きます。 決してプリントパターンに強いストレスを与えてはいけません。 ここまで来れば80%終了です。
思わずホッとします。
(19)残ったUSBコネクタの表面実装された端子とプリントパターンの間の残りハンダをナイフの背でそぎ取り、更に両者の間にナイフを差し
込むと、ポロッとUSBコネクタが取れます。 要は残りハンダを可能な限り除去することで、ハンダ付けの接合面を最小限の力で剥がす
ことが出来ます。
(17)
(18)
(19)
(20)USBコネクタを外したミニ基板に、もう一度ハンダ吸着メッシュワイヤを押し当てて余分なハンダを除去します。 その後をアルコールで
クリーニングして作業終了。 キレイに取れたでしょ。 でもこの方法は時間がかかるのでプロにはなれないですね。
Iさんにはこの基板を捨てない様にお願いしておきます。
(20)
★★★★ どんな製品でも修理用のパーツが流通していなければ、故障は独占的な修理チャンネルのお世話にならなければ ★★★★
★★★★ ならず、そこには競争原理が働きません。 輸入製品の販売やメンテナンスについては、日本はまだまだ後進国ですね。★★★★
以上