日本の花形輸出産業として自動車と共に貿易黒字を支えていたエレクトロニクス業界も中国や東南アジア諸国の追撃を受けたり、

円高の際に生産拠点を海外にシフト(この方法が問題)させた為に現在の円安のメリットを十分に享受できない構造的な問題があった

りで、最近はあまり元気がない様に見える。 特に大手電機メーカーの収益を支えていた家電製品の状況は惨憺たるありさまだ。

マーケットの構造変化も影響している。 高度成長を支えた団塊の世代と呼ばれる層は既に年金暮らしに入り、あの凄まじかった消費

文化が今や何処かの国へ吹っ飛んで行ったかの様に見える。

しかし、そこは高度のインテリジェンスを集約した日本のエレクトロニクス産業だけあって、まだまだ世界に対して強みを持っている分野は

沢山ある。 そんな最先端のテクノロジーに浸りたくなって今年も幕張メッセで開催されているCEATEC Japanを訪れてみました。

 

会場は大きく分けてホール1,2,3を使った『ライフ&ソサエティ ステージ』とホール4,5,6を使った『キーテクノロジー ステージ』に分散さ

れていました。 その他、国際会議場を使った『コンファレンスプログラム』に於いては各業種のエキスパートによるキーノートスピーチや講演

が多数開催されていて興味をそそられます。 

 

(以下のサムネール画像をクリックすると拡大します。 青文字部分をクリックすると外部リンクにジャンプします)

 

 

+++++ まず、キーテクノロジー ステージ会場へ向かいます +++++++++++++++++++++++++++++

 

(1) 前もってパソコンから事前登録をしておくと無料で入場できます。 さらに入場券をプリントしておけば会場入口でバーコードを読ませる

だけでスンナリと入場できます。 もし、それらの事前準備をしておかないと長い行列に入ってしまい、大きなタイムロスになってしまいます。

是非とも、入場券を印刷のうえ、会場に向かうことをお勧めします。

 

(2) 私はホール6から入り、逆行することにしました。 理由はライフ&ソサエティ ステージの多くはコンシューマー相手の大手家電業界の

展示が多くて足並びの応用技術の展示や、将来の夢の様な演出がされた展示に何となく拒否感を感じてしまうからです。 

戦略的な開発等は情報漏洩や特許の問題があって、余程足元を固めてからでないと、この様な場所でオープンにするとは思えません。

その点、こちらのステージでは同様の傾向はあるものの、完成製品に一歩先駆けて商品化した最新技術の部品や装置が展示されて

いて興味を引かれます。

 

    

                           (1)                                                          (2)             

 

 

(3) 自転車ネタがすぐに見付かりました。 スマホとサイクロコンピュータをコラボさせた CATEYESTRADA SMART CC-RD500B)が展示

されていました。   

 

(4) STRADA SMART にはMirror Mode Sensor Direct Mode2つのモードがあり、前者はスマホで測定した速度や高度を

CC-RD500Bへ表示させることが出来ます。 更に電話やメールの着信を表示することが出来ます。 後者はCC-RD500Bで計測した

データを走行後にスマホにアップロードして管理することが可能になっています。 

それらのメリットは?? 地図を見なければスマホをポケットやバッグにしまえる点とメールや電話の着信を表示する機能は良いと思いますが、

その他の機能を電池持続時間が短いスマホに委ねる理由が分りません。 ウェアラブル端末とGarmin Edge 等のGPSがあれば全て

間に合う筈です。 

 

(5) EPSONから発売されている Wristable GPS SF-810。 手首で心拍数を計測し、スピードや高度、走行距離はGPSを使用します。

Garmin ForeAthleteの対抗機種と思います。 メリットはやはり心拍を手首で計測出来ることですね。 ランナーにはお勧めと思います。

ウェイポイントは一箇所だけですが設定可能なので、道に迷った時には役に立つはずです。 何と国産GPS衛星のみちびきにも対応して

います。

   

(3)                                              (4)                                                   (5)

 

 

(6) このコーナーはWiTricityと呼ばれるワイヤレス給電システムのデモを行っていましたが、私が着目したのはデモで使っていたリストウォッチです。

この写真で写っているリストウォッチはまだ試作段階ですが、ワイヤレス給電が出来ること、そして心拍数だけでなく心肺機能の変化を計測する

仕組みがあるので、自分で心肺機能の低下が把握できます。 この仕組みを使えば、自分をどの程度追い込む余裕があるのか把握可能と

なります。 ランやヒルクライム、レースの際には強力な武器になるでしょう。

 

(7) Auのスマホコーナーでは防水機能の強化と手袋のまま操作できるTORQUE G01ルクジーゼロイチ)スマートホンのデモをしていました。

製造メーカーは京セラです。 このタッチディスプレイパネルは秀逸です。 静電式センサーですが手袋の種類に関わらず、感度を自動調整して

操作可能としています。 目的はあらゆるアウトドアシーンでのスマホ利用を可能とすることだそうです。 

 

(8) トルクジーゼロイチは更にワイヤレス給電や、CASIO G-SHOCK連携機能を備えていて、冬の寒い場所で厚着をしていてもメールや電話の

着信を教えてくれます。 こんな端末を欲しいですね。 但し、後発メーカーに真似されたらこの強みは失われるでしょう。

 

  

                       (6)                                                 (7)                                               (8)

 

 

(9)ウィヤレス給電は今後スマホや家電だけでなく、電車や自動車の充電にも使うことを狙っている様です。 写真はTDK非接触給電システム

を使って走行中に電源を供給するデモです。 リニアモーターカーの様に走行エネルギーを供給する磁気コイルやパワーアンプを沢山埋設しな

ければならないので設置費用は膨大なものになるでしょう。 実用化するにはそれなりの制約が必要と思います。

その他、信号待ちや駐車中に充電するスポット式ワイヤレス給電システムも考えられても実験されている様ですが、もし実用化されたら

EV(電気自動車)の活用範囲は飛躍的に広がるでしょう。

 

(10)こちらは大成建設が開発した非接触給電システムです。 実際に女性が乗ってデモをしていましたが、ビックリすることに大掛かりなコイルは見当た

りません。 路面にレールの様に引いてあるのは単なる2枚の鉄板です。 これなら安価にインフラ作りができるでしょう。

 

(11) 実は鉄板上には13.56MHzの強力な電波(高周波)が出ていて、このエネルギーをタイヤを介した閉回路でピックアップして走行エネルギーとして

活用するそうです。 使用目的としては工場内を走り回るカートや工事現場内の移動等だそうです。

確かに13.56MHzの電波は簡単なループで共振させると大きなエネルギーを取り出すことが出来ます。 でも危険です。 これだけ大きなエネルギー

を発信させると感電したら一瞬で真っ黒焦げになってしまうでしょう。 50/60Hzの商用電源や直流よりも危険です。

また、無線電波なので電磁障害対策も大きなバリヤーになるでしょう。 優れた発明でも実用化するには難しいことが多いですね。

 

  

  (9)                                             (10)                                                  (11)

 

 

(12)ペンギンの様な可愛い人形は何でしょうか?  HONDAが開発した自立式パーソナルモビリティ UNI-CABです。 米国で開発された

セグウェイと同様にジャイロセンサーを使ってバランスを保ちながら前後左右に自在に進みます。 

 

(13) HONDAUNI-CABは去年もTOYOTAのパクリマシーン Wingletと一緒に出展していましたが、今年も大人気で体験試乗は

すぐに締め切りとなってしまいました。 

でも良かった・・・今年はセグウェイをパクッたTOYOTAの Wingletが出展されていなくって。  安心しました。 天下のTOYOTA

あそこまで露骨にパクると関係の無い私でも恥ずかしくて顔から火が出てしまいます。

ところで、このUNI-CABの最高速度は6Km/h、最長走行距離は6Kmだそうです。

 

(14)一見、単なる防犯システムですがセンサー側は電池レスです。 ワイヤレス人感センサーとドアオープンセンサーは室内の照明をソーラセル

   で発電した電気を使います。 プッシュボタン式のチャイムスイッチや非常スイッチは、スイッチを押した時のエネルギーを電気に変換して信号を

ワイヤレスで送信します。 今までの防犯センサーは電池の管理が必要でしたが、これならば安心して使えます。

     

  

                   (12)                                              (13)                                                  (14)

 

 

(15) タイコエレクトロニクス(旧社名:日本エー・エム・ピー)のブースには大きな恐竜ロボット「TEサウルス」が展示され、人目を引いていました。

このTEサウルスは叫び声を出しながら、ドシンドシンと足音を立てて自立歩行します。 そしてこちらをジロリと睨みつけます。 

スマホからのリモコンで動くそうですが、凄い迫力で思わず身を引いてしまいます。 ここをクリックして動画を見て下さい。

 

(16) こちらはテレビニュースで何回か放映されたオムロンの卓球ロボット。 沢山の人々がずーっと実演を待っているのに、何処かの撮影スタッフがインタビュー

を長々だらだらと続けていて、デモが始まりません。 私は気が短いので「バカモン」と口の中で呟いて、この場を立ち去りました。

 

(17) 毎年、回路用プリント板と端子類のサンプルを惜しげもなく配布し続けている「マックエイト」。 この台の中にあるサンプルは持ち帰りOK

   太っ腹です。 私は毎年、何種類かのサンプルを戴いて自分の電子工作に流用させて戴いております。 

 

  

                          (15)                                                (16)                                                        (17)

 

 

(18) こちらも、お持ち帰り自由のサンプルです。 来年もヨロシクー!

 

           (18)                 

 

 

 

+++++ 次にライフ&ソサエティ ステージ会場へ向かいます +++++++++++++++++++++++++++++++

 

このステージでは大手家電メーカーが主体に 4Kテレビ、8Kテレビ、車のフロントガラスに情報を映し出す技術や、ウェアラブル端末

HEMS (Home Energy Management System)等の消費者向け製品を華やかに展示しておりました。

どちらかと言うと話題を先取りするショー的な要素が多いと感じました。

 

 

(19)Panasonic4K-8Kテレビの展示コーナーで強いオーラを感じました。 何とそこには実物の人間とは思えない程の絶世の美女が・・・。

もう誰も展示対象のテレビなんか見ていません。 わっと人が集まって写真を撮っています。 こんな時に観客の表情を観察するのは

面白いです。 ジーっと真剣な眼差しで見つめている人、人目をはばからず幸せそうにニターとしている人、皆さん幸せそうな顔をしています。

これはもうCEATECの製品展示の失敗例としか思えません。 一人の美しい女性の出現で男達が苦労して築き上げたものがぶち壊

れてしまう。 ・・・実際の人生でも良くあることです。 

大体、8Kテレビを購入して何を見るのでしょうか? 8Kのメリットを生かしたコンテンツがどれほどあるのでしょうか? 何故、メーカーが

必死になって8Kテレビを開発するのでしょうか?  日本の外貨獲得に貢献する戦略があるのでしょうか? 全くわかりません。

 

(20) 同上。 ズームアップしてみました。 ホントに綺麗な人です。

 

(21) こちらはカーオーディオ製品のクラリオンのブース。 こうなると技術者向けの展示会とは雰囲気が違ってきます。 何をアピールしたいので

しょうか?

 

  

               (19)                                              (20)                                                    (21)

 

 

(22)こちらはホームエレクトロニクスをフル装備した未来の家の生活を紹介するSmart Sweet Homeのデモです。 勿論、

HEMS(Home Energy Management System)の技術も使われていますが、こんなことはCEATECの来場者であれば誰でも

知っていること。 一体誰の為にこんなことをしているのでしょうね。

 

(23)EPSONウェアラブル機器の展示コーナーですが、お試しコーナーの行列がすごくて実際に手に触れることが出来ませんでした。

代わりに通路でおネエさんが米倉涼子のCMでお馴染みのシースルーモバイルビューアー”モベリオ” をかけてスマイルしてくれました。

モベリオはメガネの中で大画面の映像を楽しむことが出来ます。

 

(24)これは面白い。 パイオニアの展示コーナーでは、お店の窓ガラスに自由に描画ができる窓用のディスプレイのデモを行っていました。

   画像はパソコンから自由に変更できます。 外から見ると、これだけでお店の雰囲気がガラリと変わります。 アパレル系店舗や飲食店の

   ウィンドウに使ったら面白いかなと思います。

 

  

               (22)                                                (23)                                                      (24)

 

 

(26)シャープ開発している空中ディスプレイと非接触スイッチを使った未来志向のトイレ。 これもショー的な要素が満載で楽しめます。

まるでSF映画の様に空中にスイッチが映し出され、手をかざすとスイッチの制御が出来ます。 まるでトイレが宇宙船の中の様です。

シャープはこのシステムを得意のプラズマクラスター空気清浄機と組み合わせて高級ホテルに売り込みたい様ですが、この仕組みを他の

目的に転用すれば普及が進むかもしれません。

 

(27)今回はLED光源を使っての野菜作りのデモが多かった様です。 光の波長を制御して最適な環境を作ることが出来ます。

取敢えずは南極や宇宙船など、コストに関わらない環境での実験利用が進むと思います。 東芝や富士通は縮小した半導体製造で

余剰スペースとなったクリーンルームを使ってこの分野に力を入れています。

 

(28)展示ホールの隅に人だかりがしていました。 行ってみるとスケルトニクス株式会社が出品した強化外骨格「パワードスーツ」です。

幸運な人はこのジャケットの中に入って体験が出来た様ですが、自分が強くなったみたいで気持ちが良いでしょうね。

単にオモチャとしても楽しそうだし、工事現場や工場等での用途があるのかも知れません。 アイアンマンにもなれるかな?

 

  

               (26)                                            (27)                                                  (28)

 

 

(29)今回は自動車関係の新製品紹介や実験デモも多く展示されていました。 写真は車の周りの障害物や自転車をヘッドアップ

ディスプレイに映し出して運転者の注意を喚起するシステムです。 勿論、横や後方からの接近も知らせてくれます。

各社からは様々なアプリケーションとセンサー技術を使ってありとあらゆる情報をヘッドアップディスプレイ(フロントグラス)に表示するデモ

を行なっていましたが、私から見ると少々??です。 例えばこの画面の自転車との距離を見つめている時に左側の家から人が飛び

出してきたら、多分反応が遅れてしまうでしょう。 運転する人はお分かりと思いますが、運転中は一定のゆったりとした視野変化の中で

急激に変化するものに対しては敏感に反応します。 この様なヘッドアップディスプレイで目がチラチラしていたら疲労感が倍増で快適

どころでは無いと想像します。

 

(30) ETC2.0に対応する新型ナビが多数出品されていました。 国土交通省が牽引役ですが、例えばETC2.0対応車両が首都高速に

新たに開通した環状線を使って迂回すれば通行料金を割り引くというものです。 新型ナビでは交通状況を監視して最適なルート案内を

するだけでなく、迂回ルートの選択をアドバイスすることが出来ます。 そんなにインテリジェンスがあるのなら、ある区間が渋滞していて遅延が

発生した場合も料金を割り引くことも可能な筈です。 渋滞は首都高速路上を一時的に駐車場の様な状態にするので車が沢山入り、

料金収入は大幅に増加します。 これは利用者から見れば理に合わない話なので料金の一部を返して欲しいものです。 

以前に首都高速の料金を距離制に変更した時に、そんな提案をしましたが、敢え無く却下されてしまいました。 現在のETCシステムは、

それを可能にするセンサーとネットワーク、サーバー等の設備は十分に備わっている筈なのに理解できません。

 

 

                (29)                                                 (30)

 

 

 今回はHEMS展示の一環として日産自動車のLEAF to Home をアピールして欲しかったのですが、      

残念ながら展示はありませんでした。 蓄電用のバッテリー装置は高価なので日産LEAFのバッテリを活用    

して交流電源とする方式です。 その為の装置は工事費込み33万円と安価です。 使い方によっては       

深夜電力やソーラシステムで充電して昼間は自動車として走ったり、バックアップ電源として流用することが     

★ 出来ます。 停電対策や深夜電力を日中に使えるので小規模医院やお店でも活用価値があるかも。    

 

★ その他で確信したのは「スマホはキャリアが販売する汎用型からメーカー独自の機能を付加した機能優先    

型へ変革」すること位かな? そうでなければ、せっかくの高性能モバイルコンピュータの使い方として無駄が  

多すぎます。                                                                                                         

 

以上