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ファイナルステージはFinal Stage Resister(FSR)とか Final
Stage Unit(FSU)、Hedgehog(ハリネズミ) そしてブロアーレジスター等々の呼称はありますが、それだけ 話題に上がる(よく壊れる)パーツです。 機能的にはオートエアコンのブロアーモーターの強弱を制御 するDCアンプと位置づけられます。 以前は手動スイッチで 抵抗値を変化させて風量を変化させていたので、ブロアー レジスターの名前が残っていると言われています。
ブロアファンが暴走した場合はヒューズ(私の場合はF50)を抜けば停止します。
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先月の7月13日に2回目の完全バッテリー上がりが発生し、3年使ったバッテリーを新品に交換したのですが、何となく
駐車時の消費電流が多い感じが拭えませんでした。 でもバッテリー交換後に測定した暗電流の値がイグニッションスイッチ
オフの20分後で32mAと期待以上の好成績を得たので、電装品のリークについての心配はしていませんでした。
そんなある日、車のイグニッションキーを抜いたまま暫らく運転席に留まっていたところ、エアコンの吹き出し口からエアーが出て
来るのに気付きました。 その空気量と吹き出す時間は僅かですが、キーを抜いた後にエアコンのブロアーファンが回転するの
は何となく納得が行きません。
その数日後、前と同様にキーを抜いたまま運転席に座っていたら、再度エアコンから風が吹き出しているのが確認出来
ました。 この時のエアー量や吹き出し時間が前回より多く、明らかに異常と感じる程でした。
これではバッテリーが空になる・・・そうです。7月13日にリモコンが効かない程のバッテリー完全放電が再発してバッテリー
を交換したのですが、放電の本当の原因はこれだったに違いありません。 通常、バッテリーが劣化しても、リモコンキーが
効かない程ひどい放電は経験がありません。 せいぜいルームランプ等の灯火類が暗いと感じた後に、セルモーターが廻ら
なくなって初めてバッテリー上がりと気が付く程度の筈です。 早速、調査と緊急対策を講じることにしました。
尚、本作業はE46をDIYで修理する人々の間では難易度が高いとされていますので、下記項目に留意が必要と思います。
◎過去にこの車種でDIY修理の経験があり、かつ「絶対直す!」という気力が充分あること。
◎狭いところに上半身を突っ込みながらで仰向けになって作業するのでLEDライトや鏡、適切なツールを準備すること。
◎猛暑の時期は扇風機を使うか作業を避けた方が良い。
◎狭い場所なので、お相撲さんの様に体格の良い人や閉所恐怖症の人には、この作業には適さないと思います。
◎行き詰まったら無理に頑張らないで、一旦退散して、もう一度構造を調べたり、使っているツール類の見直しをする。
等々を強くお勧めします。
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(1) BMW整備マニュアル及びネットで調べてみると、ファイナルステージは下記の様に常時+12V電源とブロアファンの
間に接続され、オン/オフと風量制御はコンソールのエアコン・コントロールパネルからの信号で行なう様になっている。
気になったのは、モーター回路 には機械的なスイッチが存在しないので、ファイナルステージが誤動作するとブロアファン
に通電してしまうことだ。 事実、ネットでファイナルステージのトラブル事例を見てみると、同様の問題が多数発生して
おり、最悪の場合イグニッションキーを抜いた状態でもファンが最大回転で暴走してしまう様だ。 そうなったら事前
知識がなければ慌てしまう。 でも図のF50(40A)のブロアファン用ヒューズを抜いてしまえば大丈夫。 私の場合も、
この事象に近いと判断出来るが、トラブル状態が固定的に発生するのでは無くて不定期、かつ短時間に顕在化
する故障の様だ。
*注)製造年によってヒューズ番号が異なる場合があるので必ず備え付けのFuse Position Listで確認して下さい。
(2) それではトラブル発生時にどの位の電流がブロアーモーターに流れているのか調べる為にF50のヒューズホルダーに
アダプターを入れて電流計を挿入したところ、運良く?トラブルが発生してモーターが廻り始めた。
勿論、イグニッションキーはオフの状態。
(3) その時の電流値は写真で撮れたケースでは7.5A, 写真に撮れなかった瞬間値は15Aもあった。 これでは長時間
の駐車中にバッテリーが上がってしまうのも当然だ。 バッテリー上がりの件は見事に騙されてしまった様だ。
取敢えず、ファイナルステージ交換準備が整うまでは、長時間駐車時にヒューズホルダーのF50(40A)は抜いておく
ことにした。 ヒューズの位置はヒューズホルダに添付されている位置図面か、後述(16)の写真を参照して下さい。
(1)
(2)
(3)
(4) ファイナルステージの交換は多くのBMW E46 DIYユーザーが経験しており、『BMW E46 ファイナルステージ交換』と
ググるとネット上から充分過ぎる程の手順紹介記事を得ることが出来ます。 でも、この作業は正直言って大変です。
多くのDIYユーザーが2度と交換したくない部品と記載しています。 私も同感です。 途中で諦めかけましたが、日を
改めて、再挑戦の結果交換作業を終えることが出来ました。 写真は右ハンドルの場合のおおよその位置を示したもの
です。 当然、インストルメントパネルのアンダーカバーを外さなければなりません。
(5) OBDUコネクタはアンダーカバー裏側のスライドロックを外した後に、コネクタ部分を思い切りハウジング内に押し込んで
外します。 写真はコネクタ部分を抜いた後のものです。意外と硬いので強く押し込んで良いのか疑問が涌いたりして
苦労しました。
(6) アンダーカバーとステアリングシャフトの間にファイナルステージのコネクタが見えて来ました。 でもこれからが大変なのです。
(4)
(5)
(6)
(7) ファイナルステージを外す為には、その手前にあるベントアクチュエーター(外気/内気循環を切り替えるフラップを開閉
するモーターとその台座で構成)を先に外す必要があります。 但し、モーターと台座は分けて外した方が良いと思います。
モーターはクリップとコネクタだけで固定されているので外すのは簡単ですが、取り付けの際にはモーターシャフトの
先に付いている黒いキーを相手の溝に注意深く合わせてから押し込む必要があります。
(8) しかしベントアクチュエーターの台座を固定する2本のT20トルクスのうち、奥側の1本が目視出来ないので手探り
で探さなければなりません。 しかも、ここに引っ掛けが潜んでいます。 ベントアクチュエーター固定スクリューの近くに
ファイナルステージの取り付けT20 スクリューがあるので、これを目的のスクリューと間違えやすいのです。これを外しても
ベントアクチュエーターは外れません。 私はこれで長時間を費やして、挙句の果てには根気が途絶えて作業を中断して
仕切り直しをすることになりました。
とにかくネジが見えない、狭い、ドライバーの長さが合わない、エアダクトが作業の邪魔をする等々でグッタリと疲れます。
気温が高くて樹脂が柔らかければ邪魔なエアダクトを無理矢理押しのけると、作業がやり易いかも知れません。
(9) 橙色の丸で示した上側のT20トルクスが、ファイナルステージを固定しており、これはあとで簡単に外せます。
問題のスクリューは下側の黄色い丸の中のビニールテープ (本当はビニールテープなぞ巻かれていません。 適切な
写真を撮影出来なかったので取り付け時の写真を使いました)の下にあります。
(7)
(8)
(9)
(10) 順番が後になりますが、この写真は各T20スクリューの位置を分かりやすく示しています。この位置を頭に入れて
から作業すれば少しは楽に作業が出来ると思います。 先にベントアクチュエーターを外します。 次にファイナルステージを
外すのですが固定するT20スクリューは年式により付いていない場合があります。スクリューを外した後にクリップを外側に
押しながらコネクタごとファイナルステージを揺さぶりながら引き抜きます。 ベントアクチュエーターとベンチレーション切り替え
フラップの間に付いている太い針金のリンクは外すと後が大変なので、私の場合は付けたままで作業を行ないました。
(11) さて、問題のT20 トルクスを外す為には適切な太さと長さのトルクスドライバーが必要になります。
太さは出来るだけ細い方が良いです。 太目のエクステンションで繋ぐとベントアクチュエーターと干渉してスクリューヘッドの
穴にトルクスドライバーの先が正しくセットできません。 写真の細形の簡易型エクステンション程度の太さが限界と思い
ます。 出来れば一本ものが良いと思います。 長さは12cmから15cm程度で、これを越えるとステアリングシャフトと
干渉してドライバーが垂直にセットできません。 このツールの選択次第で作業効率は大きく変わると思います。
(12) これが取り出した17年近く使ったファイナルステージです。 意外と埃も付いていないし腐蝕もしていないので、
見た感じは良さそうなのですが、電気的には問題があるのでしょうね。ここまで外せれば、作業の90%は終了した
様なものです。 新しいパーツはいつもお世話になっている某ネットショップお勧めの格安品を購入しました。
今更ドイツ製の高級品を使っても仕方が無いでしょう。 ドイツ製でも壊れるそうなので。
さて、取り付け作業を開始しますが、スクリューの位置が理解出来ているので作業は遥かに簡単に進みます。
最後にエアコンをオンにして温度設定の変更に追従してブロアーファンの回転が変化することと、イグニッションスイッチ
をオフにした時にブロアーファンが回転しないことを確認して作業完了!
多分、次回はもっと簡単にかつ短時間で作業を完了させることが出来ると思いますが、もう二度とやりたくありません。
(10)
(11)
(12)
++++++++以下は外したファイナルステージの確認実験につき、交換作業とは関係ありません+++++++++
(13) さて、ファイナルステージを交換した以降はトラブルが発生していないので一件落着と思いますが、その一方、本当に
ファイナルステージが壊れているか否かを確認したくなりました。 但し、ファイナルステージを制御する信号方式がチョッパ
制御方式なのか、電圧制御方式なのかサービスマニュアルでは全く理解できません。 仕方が無いのでとにかくファイナル
ステージの制御入力端子に1KΩ抵抗経由で+12Vを印加して電球負荷が点灯するかを確認することにしました。
添付の回路図は、ピン番号以外は全くの私の想像の世界で作成したので信頼性は高くはありません。
(14) 仮テスト回路 をジャンパー線とブロアファン代わりに21W電球を使って作成しました。 図のスイッチをオンにすると電球は
点灯し、オフにすると消灯します。 オフ状態で長時間観察しても電灯は点灯しません。 どこも悪くは無さそうです。
(15) そこで、スイッチの代わりに私の指でファイナルステージのフレームと入力Pin3を短絡させたところ、何と電球が明るく
点灯したではありませんか! テスターでゲートに流れる電流を測ると私の指に20μA (100万分の20アンペア)程
流れた様です。 それにしてもこの程度のノイズ的な電流で電球が点灯するのは、かなり入力インピーダンスが高くて電圧
の高低でスイッチングする回路 と想像出来ます。 もはや新品と比較できませんが、ひょっとしたらノイズフィルタや電圧
安定用のコンデンサが壊れている可能性があります。
もし、新品で同様な現象であれば、この回路方式ではノイズやコネクタ等の接触抵抗の増大に弱いので使用環境の
厳しい自動車に使うのは少々心配になります。 ネットの投稿ではファイナルステージのコネクター接触不良を直したら
正常動作したとの記述がありましたが、理にかなっているのかも知れません。
先の事象並びにPin3の入力抵抗値が高いことから、ファイナルステージで使用している半導体は電流制御方式の
パワートランジスターではなくて、近年多用されているnMOS型パワーFET素子と推測出来ます。 この方式は現在
では標準的に使われていますが、適切に設計されたパワートランジスタ電流制御方式は比較的ノイズにも強く、接触
不良の場合はブロアーモーターが回転しない方向の障害になるので私の好みです。
(13)
(14)
(15)
(16) ヒューズホルダーはE46の場合、グローブボックスの天井部分にあります。 ホルダーカバーのノブを回してカバーを下ろす
と写真の通り沢山の各ヒューズとFuse Position
Listが現われます。 初めて見ても理解しずらいので、暇な時間等を
利用して普段から眺めておくことをお勧めします。
(16)
以上
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2016.09.05追記: ファイナルステージ交換の大分前から、ブロアファンが高回転で廻る際に“ザッザッザッ”と脈流の様な
回転ムラが発生していましたが、交換後にこの症状は発生しなくなりました。 回転ムラは故障の
初期症状の可能性がある為、追記しました。
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