この投稿は自転車整備のベテランの方なら既にご存知のことばかりと思いますが、私のつたない経験と情報収集力そして自転車観を 基準に感じたり経験したことを書き留めております。 あくまで管理人の日記および忘備録としてお読み戴ければ幸いです。 今回は自転車のワイヤー類についてプロ自転車整備士の作業を眺めていて感じたことや、教えて戴いたことをメモしました。 |
ワイヤーについて
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左の写真はロードバイク、クロスバイクそしてマウンテンバイク(MTB)に使われる主なインナーワイヤーの種類です。 コストの安いママチャリを除いてステンレス製が主力と思いきや、スチール製も結構多く使われています。 スチール製はカット等の加工が容易であり、通常の使用では1年や2年で錆びは発生しないので、現在でも多く使われています。 ちなみに; スチール製: シマノ DuraAce Cable
Set のシフター用とブレーキ用ワイヤー カンパニューロ コーラス グレードのブレーキワイヤー ステンレス製:カンパニョーロ シフターワイヤ、 シマノ ステンレス製と明記された保守用ワイヤー。 その他、PTFEコーティング(フッ素コーティング)やポリマーコーティングされた高級ワイヤーも販売されています。 しかし、このポリマーコーティングは剥れ易いとのことで、ギリギリのパフォーマンスを競う決戦用とも考えられます。 従って私のような通常サイクリングやポタリングレベルが殆どの一般人はインナーケーブルを滅多に交換しないので、長年使っているシマノのスチールまたはステンレス製ワイヤーで十分と感じています。 |
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シマノのアウターケーブルは一般的には左の三種。 加工の容易性からスチール製が多いです。 ■シフター用アウターワイヤーは細いスチール線がポリエチレンライナーの廻りに沿わせて成型されており、比較的腰が強くて曲がりにくい硬いワイヤー性能を持っています。 ■MTBブレーキ用アウターワイヤーは、ロード用と区別されて製品化されています。 その性能はロードと比べてかなり柔らかく、曲げや耐水性能が高いとされています。 シマノ製のカラーは黒とシルバーの2種しかありませんがMTBの他に、折り畳みバイクやクロスバイクに向いているそうです。 ■Roadブレーキ用アウターワイヤーはMTB用と同様の平板巻線構造を持っていますが比較的硬く、ブレーキストロークの短いロードバイクでカッチリしたダイレクト感を得る為だとも言われています。
また、曲がりのキツイハンドルバーに沿わせるのでライナーも硬いそうです。 MTB用との判別は 左の写真の通り “Shimano SLR“のプリントで可能となっています。 |
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写真はプロショップの切売用の40M巻アウターワイヤー大箱です。 左はロードバイク用のブレーキアウターワイヤーHIGH GRAY色で 型式名は SHIMANO SLR 型番は Y80900012 右はMTB用のブレーキアウターワイヤーグレーHIGH GRAY色で 型式名は SHIMANO MSYSTEM 型番は Y80900014 |
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雑誌やネットの記事では、インナーワイヤーの錆を防いだり、動きをスムーズにする為のライナーチューブの存在がはっきりと認識出来ませんでした。 しかしながらライナーチューブは、ワイヤー組み付け作業時には十分に注意しなければならない部分でもあり、インナーケーブルの動きに大きな影響を及ぼす部品でもあります。 先に記載の通り、シフト用アウターワイヤーは捩れの無い真直ぐな細線でライナーを取り囲んでいる為に曲がりにくく、かつスプリングの様に復元性の強いワイヤーです。 |
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ブレーキ用のアウターワイヤーは、ブレーキをかけた際の力によって生じる歪(縮み)を最小限に抑える為に平型のスチール若しくはステンレス線を筒の様にライナー線に巻きつけています。 MTB用は曲げ易く柔らかく、ロードバイク用は曲げにくい固めの性能を持っています。 |
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アウターワイヤーと同様にクロスバイクやMTBのVブレーキに取り付けられているワイヤーガイドにも、ポリエチレンライナーが入っています。 本来、ライナーは交換するものではありませんが、自転車パーツとして販売されています。 |
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【アウターワイヤの切断】 ご存知、アウターワイヤーを切断するためには、ワイヤーカッター、千枚通し、金ヤスリが最低限必要となります。 Shimano 製ワイヤーカッターは高価ですが、アストロプロダクツやその他の工具メーカーからも少しだけ安価なものが販売されています。 通常のカッターとの違いは刃先がワイヤーを囲い込むような形状をしており、切り口ガ潰れにくくなっています。 |
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シフト用アウターワイヤーの切断は特にテクニックは不要と思いますが、少しずつ廻しながらギリギリとスチールワイヤー部分を均一にカットして行く感触かな? それでも、かなりの確率でライナーチューブの切断面が潰れて何処からケーブルを通したら良いか分からなくなってしまいます。 |
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次にブレーキ用アウターワイヤーをカットします。 まず、軽くカッターをアウターチューブ(外皮)に当てて廻しながら、螺旋上に巻かれたスチールワイヤーの隙間を探ります。 |
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隙間に刃先が入った感触を得たら写真の様に少しだけケーブルを曲げて更に中に入り込む様にします。 そして刃先がワイヤー中心のライナー部分を切断した後、残りの平型スチールワイヤー部分を一気にカットします。 |
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もう一度、カッターの刃先がスチールワイヤーの切れ目に入って行く様子をアウターチューブが無い状態で再現します。 既にお分かりの様に、刃先が隙間に入らずに板部分を押した状態で切断動作を行うと、コイル状に巻いたスチールワイヤー部分が潰れてしまう為です。 隙間を探して、そこに刃先を入れて一気にカット! これだけです。 |
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シフト用アウターワイヤーの切断面です。 スチールワイヤーは綺麗にカットされていますが、肝心のライナー部分の切断面が潰れて開いていません。 これではインナーワイヤーを通すことが出来ません。 千枚通しでライナー部分の口を捜して、こじ開けなければなりません。 もし、ライナーの開口部が分からない場合は、カットしたワイヤ端部を指でつまんで転がす様に
もむと状況が改善される場合があります。 |
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ブレーキ用アウターワイヤーの切断面です。 多くは綺麗に切れるのですが、写真の様にカットの際にその切断面が捩れて起き上がってしまうことも多々あります。 これではインナーワイヤーの邪魔になるし、エンドキャップを被せても殆どの切断面が浮いてしまいます。 カッターの刃先が入ればカッターで、そうで無ければヤスリを使ってこの部分をカットします。 |
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このワイヤーはスチール製なので、平ヤスリで簡単に凸部を削り取ることが出来ます。 ヤスリの錆が酷くてスミマセン。 これでは削れにくいですよね。 正直、私は状態の良い平ヤスリを持ち合わせていないので、ミニグラインダーを使っています。 |
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もし、ステンレス製ワイヤーの場合は、結構硬いので平やすりでは大変かも知れません。 電動ドライバーの先に100均やホームセンターで売っているロータリーヤスリを取り付けて削るか、小型グラインダーを使用すると便利です。 |
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ミニグラインダーやドリル+ロータリーヤスリを使うと写真の様に綺麗に揃います。 少し位バリがあっても切断面の全体が平らであれば、アウターキャップを被せれば問題ありません。 尚、シマノの新品アウターワイヤーには既にグリースが封入されているので追加給油の必要はありませんが、メンテナンスで清掃/給油を行う場合は 専用のシリコングリース(SIS-SP41)をインナーワイヤー側に薄く塗布してから組み付けます。 インナーワイヤーが擦れる相手は、アウターワイヤー内のライナーチューブだけです。 |
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アウターケーブルを切断後に、とっても重要なこと; それは、インナーワイヤーがスムーズにアウターワイヤーのライナーチューブを通過する様にすることです。 その為に、潰れたライナー部分の開口部を探して、その口に千枚通しを差し込んで綺麗な穴を開けます。 シフトアウターケーブルは全体を潰すような方法でカットするので、ライナーも潰れやすくて、開口部を探し出すのに結構苦労します。 |
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もし、いい加減に千枚通しを突っ込んで、インナーワイヤーの通り道を無理矢理作ると・・・・・ 最終的にはライナーの内部まで穴は貫通しますが、左の写真の様に途中まではライナーの外側を通過することになってしまいます。 これでは抵抗が増えるし、アウターワイヤーとインナーワイヤーの金属同士が直接こすれて「ガリガリ」感が発生したり、雨の後などに錆が発生して固着したりします。 千枚通しの先を使って根気良くほじくる様に切断面のライナー開口部を探しましょう。 |
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左はアウターワイヤーのバリを研磨し、ライナーの開口部を千枚通しで丸い穴に修正した後の切断面です。 ブレーキワイヤーの場合、ライナー素材ガ厚くて硬いので開口部を探すのは容易です。 カットが終了したら指定のエンドキャップを取り付けましょう。 但し、メーカー指定で取り付けない場合もあります。 (例:Shimano STIレバー側のブレーキワイヤー等) 一般的に樹脂製キャップはシフト用、金属製キャップはブレーキ用と言われていますが、MTBの様に防水性能を重視する場合は樹脂製が多く使われています。 但し、経年劣化により潰れたりヒビが入り易いので、定期的な点検が必要です。 金属製はブレーキ等の力がかかる部分に使うと耐久性が高いだけでなく、カチッとしたダイレクト感が良好と言われています。 防水性能は不明ですが、私のバイクは金属製なので個人にも見た目からも金属製キャップを愛用しています。 |
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ワイヤーの簡易点検 |
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【ワイヤーの交換次期】 明確な基準は設定されていませんが、ショップ等の推奨は下記の通りです。 ■シフト インナーワイヤー :1年1回もしくは5000km ← 一番切れ易い。 ■ブレーキ インナーワイヤー:2年に1回もしくは10,000km ■アウターワイヤー :インナーワイヤー2回交換時 シフト インナーワイヤーの交換間隔が短いのは操作回数が多いことだけでなく、ワイヤー自体が細いこともあってタイコ取付部の根元がほつれて切れ易いことも理由として含まれます。 そこで、お世話になっているサイクルハウスGIROの店主から教わった簡易的なシフトインナーワイヤーの点検/清掃方法を下記の項目22から25で紹介します。 (但し、シフトケーブルがフレーム内部を通過している車種については未確認です) |
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(1) リヤスプロケットを最大位置(Low)にセットします。 (2) 手でダウンチューブ部のインナーワイヤーを引っ張って弛まない様にしながら、後輪を止めた
ままトップ(最小ギア)までシフトアップします。 これでシフトワイヤーを一番引っ張った状態から一番緩めた状態になったので、インナーワイヤーに弛みが出ます。 |
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(3) ワイヤーが緩むとアウターワイヤーがフレームの固定部から外れます。 写真の部分と、リアディレーラーの合計2ヶ所のアウターワイヤーを外してスライドさせることでインナーワイヤーが露出しますので清掃と給油(シリコングリース)が可能となります。 |
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(4) 次にインナーワイヤーを張ったままブレーキレバーをマジックテープ等で写真の様に握った状態にして固定します。 (5) すると、写真の様にインナーケーブル抜き出し穴ガ現れてタイコを押し出すことが出来ます。 インナーワイヤー交換の経験者であれば、お分かりと思いますが注意点として写真の状態で決してレバーの固定テープを外してはいけません。 何故なら、ブレーキレバーはスプリングで戻ってしまうのでインナーワイヤを曲げてしまったり、タイコ部分をシフター内メカ部分に挟み込んで最悪ケーフルが抜けなくなる可能性があるからです。 (恥ずかしながら経験済) (6) インナーワイヤーとタイコの繋ぎ目部分で細いワイヤーが切れていないかを確認します。 一本でも切れていたらシフトメカに引っ掛かったり、他の部分も切断し易くなっているので問答無用での交換をお勧めします。 |
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(7) リアディレーラーのインナーワイヤーもこんな感じでお掃除が出来ます。 特にこの部分は摩擦し易く汚れ易いので、時々クリーニングをすると良いと思います。 この手順では、ディレーラーの調整は不要なので、慣れない方でも愛車の点検と掃除が出来ると思います。 さて、戻し作業を行います。まだ気が抜けません。 (8) アウターワイヤおよびインナーワイヤーを定位置に戻します。 (9) ダウンチューブの所で先程と同様に手でインナーケーブルを引っ張ってテンションをかけます。 (10) インナーケーブルのタイコ部分がシフトレバーの中に正しく収まったことを確認します。 (11) ブレーキレバーを仮固定していたロープまたはマジックテープを注意深く外します。 まだインナーケーブルのテンションを緩めてはいけません。 (12) シフトレバーを最大ギア(ロー)方向に止まるまで操作します。 (13)最後にクランクを廻しながらシフトアップ/ダウン操作を行って確認します。 |
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ワイヤー類を一度に全交換する必要性が少ないことを前述しましたので、個別に購入するとして純正シマノ製品をカットして安価に販売してくれるネットショップを紹介します。 インナー、アウター共にエンドキャップが付属していない場合は、別途の購入が必要です。 アウターキャップは個人的には金属製が好みです。 但し、不明点を質問したり直接購入したい場合はリアル店舗がある経験豊かなショップがお勧めです。 下記、ワイヤー種別ごとの価格とAmazonショップを紹介します。 カラーも各種ある様ですが、ここでは黒に統一しました。 下記項目ごとにクリックして下さい。 |
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