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今年の夏ごろから走行中にアクセルを戻したときにエンジン付近から「ヒューン」と軽い空気の鳴る様な音がする様になって

来ました。 特にエンジンが不調な訳では無いが何となく気になってしまいます。 オートマチックトランスミッションの流体部分

か、エアコン関係か、エンジン回転に比例して負荷の変化するベアリング部分なのか、若しくはブローバイガスのバキューム

ラインのゴムホースが破けて空気を吸っているのか見当が付きませんが、まずは可能性のある部分を調べるしかありません。

INPAを使って調べても特に異常となるログや空燃費のグラフ等にも異状が見られません。(私が見た限りはです)

もうすぐ17歳の低年式車なので、アチコチの樹脂部品が痛んできているのは間違いなと思います。

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(1) そう言えば2013年4月にエアコン消臭対策を行った際に写真(16)Ventホースの劣化を発見しましたが

特に不調が発生しなかったので放置していました。 その時の写真が下記(1)でこれが現在どうなったのか確認する

必要がありそうです。

 

(2) BMWのブローバイガス処理はCCV (Crank Case Ventilation )システムと呼ばれ、その構造は樹脂部品を

主材料として結構複雑になっています。 ガスの流れは写真(2)の赤線で示す様に;

@     シリンダヘッドから流れ出たオイルミストを含むブローバーガスがオイル・セパレータ−に運ばれる

A     オイル・セパレーターでサイクロンの原理を使ってオイルとブローバイガスが分離される。

B     オイル成分はオイルレベルゲージの根元からオイルパンに戻される。

C     ガス成分は2本のパイプに分流されて吸気側のインテークマニフォールドに戻される。

今回、確認が必要なホースは図中の7番のホースです。 このホースは分割されたブローバイガスをBANK2(シリンダー

4から6)のインテークマニフォールドに送る役割ですがが、配管ルートがシリンダーヘッドに並行しているし、上に

化粧カバーがかけられているので、熱の影響を受けて痛み易い様です。

 

(3) まずはエンジンフードを開けて化粧カバーを取り外すのですが、その前に正面のエアコンフィルターを外します。

詳細手順は以前に投稿した「2013.04.25 Car Maintenance エアコンの匂い退治」で紹介しています。

 

  

(1)                                             (2)                                                       (3)

 

 

(4) エアコンフィルターを外すと正面にフィルターハウジングを固定する4本のT30トルクスとハウジング外側に2本のT30

トルクスが見えます。 実はフィルターハウジングは2分割されていて、エンジンの化粧カバーを外すだけであれば内側の

4本だけ外せばOKです。 外側の2本は更にエアコンブロアモーターやエバポレーターへアクセスする際に外します。

 

(5) フィルターハウジングを外すとこんな感じ。 これでエンジン奥側の作業スペースが確保出来ます。

 

(6) 例のゴムホースを見ると無残にもヒビ割れて完全につぶれています。 このホースは上側がBANK2のインテーク

マニホールドなので上側からバキュームで吸われてつぶれているのです。 エンジンを停止すると丸く戻ります。

 

  

(4)                                            (5)                                                       (6)

 

 

(7) このパーツは BMW Parts#11617504536 としてネット調達が可能です。 17年前の車の補修部品がネットで

調達出来るのは非常に有難いです。 しかも社外品で安価。 (外径 14-15mm、内径 8mm、厚さ  3mm)

 

(8) でも、このホースの奥側の取り付部は櫛型のAir Distribution Peaceの下に入り込んでいて、クランプを緩める

ことが非常に困難です。 私の場合は写真(8)の様にAir Distribution Peaceを外しました。

  しかし、これが外しにくくて参りました。 結局、インテークマニホールドに入り込んでいるパイプ1本毎に板切れを突っ

込んで釘を抜く様に少しずつ持ち上げて外しました。 この部品も樹脂製なので無理にこじ上げてはいけません。

 

 

(7)                                               (8)                               

 

 

(9) これが外したリターンホース。 M52エンジンの場合、手前は金属バンドですが、奥側のクランプはこんな感じ。

BMWはホースクランプまで樹脂製なので古くなると割れやすくなって困ります。

 

(10)    クランプのはずし方は写真(10)の様にギザギザ部分を強くつまんで、ロックを広げてからこじり抜きます。

   それでも外れなければ、両側のツメ部分に小さいマイナスドライバーを突っ込んで強制的に広げます。

 

 

(9)                                                  (10)            

 

 

(11)    ホース裏側は完全に割れて隙間が出来ていました。 バキュームラインなので、ここからエアーを吸い込んだと

思います。  これで「ヒュー」音が消えればシメタものです。

   ところで、このホースが完全に破れてインテークマニフォールドのバキューム圧が低下したらどうなるのでしょうか?

 そこで、エンジンをかけてアイドル状態でこのホースを抜いてみました。 すると、いきなりアイドリングが不安定になり

最終的にはエンジンが停止してしまいました。 私のケースではホースが縦割れしたので吸気側のバキュームでホース

がつぶれてリークが最小限に抑えられた様です。その分、ブローバイがスはBANK1のシリンダー1から3に全て流れ

込んだと思われます。 CCVシステムは高温高圧にさらされる割には全て樹脂部品で構成されているので長使用に

よる劣化が激しい様です。 低年式のBMW E46はこのバキュームラインのリークに注意しなければいけませんね。

 

(12)    ホースの内側は非常に綺麗でスラッジ等の詰まりものは付着していませんでした。

 

(13)    このホースの反対側は写真(13)の様に金属ベルトで締め付けていますが、ホースの内側は同様に綺麗でした。

 

  

(11)                                                   (12)                                                 (13)

 

 

(14)    Air Distribution Peaceの裏側はこんな感じ。オイルセパレータ(CCV)から送られたブローバイガスは2分岐

され、BANK1(Cyl.1-3)Aの穴から1,2,3の小穴を通してインテークマニホールドに送られ、BANK2

(Cyl.4-6)は問題のホースを経由してBの穴から4,5,6の小穴を通してインテークマニホールドに送られます。

即ちAir Distribution PeaceBANK1BANK2の間には仕切り壁がある様です。

 

(15)    くどいようですが、写真(15)は先の写真(2)の図で示したホースNo.3の分岐部分を示します。

両側の穴はブローバーガスをAir Distribution Peaceからインテークマニホールドに送り込む為のものです。

 

(16)    Air Distribution Peaceとインテークマニホールド間のO-Ringは念の為新品に交換しました。

これだけはディーラーから調達。 Pats#11617502761 です。  6個で約2,000円もします。

 

  

(14)                                                      (15)                                             (16)

 

 

(17)    本来は交換の必要が無かったのかも知れませんが、バキュームリークが怖いので、Air Distribution Peace

インテークマニフォールド間のO-Ringを交換しました。  結構硬くて外しにくいです。

 

(18)    新しいホースを取り付け後、O-Ringに薄くオイルを塗布してからAir Distribution Peace

インテークマニホールドに差し込みます。 結構硬いのでシリンダー毎に一個ずつハンマーで軽く叩いて押し込むように

装着しました。 繰り返しますが17年経過した樹脂部品なので強く叩いてはいけません。

 

(19)    上が新しいリターンホース、下が古いものです。 新しいパーツは社外品ですが熱対策としてゴムホースの周りに

断熱材を巻いてあります。

 

  

(17)                                                 (18)                                                  (19)

 

 

(20)    新しいホースを装着した写真です。 断熱材で太っているので何だか狭いところに無理矢理押し込まれた

感じがします。

 

(21)    分岐部分の固定バンドをしっかりと締め込みます。 ここまでやったのだからこれで「ヒュー」音が消えてくれ!と

祈る様な気持ちなのですが、現実はそんなに簡単に解決するものではないでしょうね。

 

 

(20)                                                     (21)                                              

 

 

(22)    ついでにブローバイガスの出口である写真(2)Vent Pipe2とシリンダーヘッドカバーの接続部の状態を

確認する為にホースクランプを外します。 やっぱり外しにくいですね。 

仕方がないのでクランプのツメ部分に小型マイナスドライバーを突っ込んで無理矢理外しました。 

 

(23)    外したホースの内側を確認しましたが、写真の様に綺麗でした。 ホースは高温と経年劣化が激しい様でしたが

CCVシステム内部の詰まりや汚れはそれ程でもない様です。 オイル交換はBMWの指定通り2年に1回、車の

使用環境は普通のサンデードライバーと同じ。 ガソリンは指定通りの普通のハイオク。 特に高負荷運転ばかりをする

訳ではなく、いつもトロトロ走るわけでも無くて全く平均的な使用環境と思います。

これで作業完了!

 

 

(22)                                 (23)                                                     

 

 

作業日: 20161122

走行距離: 88,752km


  後日追記: 「ヒュー」音に気付いたお陰で、とても大切な部分の不具合を修復することが出来ました。

でも、今回の処置では「ヒュー」音は大幅に減少したものの、完治は出来ませんでした。 

          この件で音に対して神経質になった為かトランスミッションからも僅かですがヒュー音が出ていることが分かり

ましたが、この音は急激に低速ギアにシフトダウンしたりして負荷の変動が大きい場合に一時的に発生する

もので他のオートマ車で確認した際も同様でした。

いろいろと調べた結果、最終的にエアコンスイッチを切ったり、エアコンベルトを外すと音が止るところまで切分け

が出来ました。 そうなるとエアコンシステムの何処かが音の原因と判断できます。 もしエアコン・コンプレッサー

やエバポレーターが原因であれば手間と費用が結構かかりそうです。 古い車で何処まで手を入れるかは

判断に苦しみますが、現時点では機能的には全く問題がないのでエアコン・ガスチャージ程度は実施して

みたいと思います。  やれやれ、完治までまた長い道のりを歩かなければならない様です。