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年末の慌しい時期に家庭サービスのつもりで外房海岸へドライブに行き、楽しい気分のまま帰途に立寄ったコンビ二
を出発する際に何と車のエンジンがかからない! キーをいっぱいに右に回してもスターターモータのカチン音もしない。
エアコンのファンは元気に廻り、オーディオのCDは元気に音楽を奏でているのに・・・・・思わず冷や汗がタラーリ。
平和な日常生活から一転、奈落の底に突き落とされた様な辛い一瞬でした。
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(1) 結果から言えば運が良かったこと、そして以前の経験を生かせたことが重なって20分程度のタイムロスで再スタート
することが出来ました。 その理由はこれから説明します。
まず、他の電装品が元気に動作しているのでバッテリー上がりではない。 また、スターターリレーのカチン音もしない
ので、スターターモーター本体の故障の確率は低いであろうと考えました。 残るはイグニッションキーの接触不良か
スターター回路 のヒューズ切れ、またはイモビライザーの故障またはシフトレバーの位置が悪いことが考えられます。
そこで関係する電気回路を調べてみると、バッテリーから+12Vの電源が写真(1)のF108(200A)ヒューズを通過して
からスターター回路の専用ヒューズF105(50A)を経由してイグニッションキースイッチのPin5に接続されていました。
(2) この図はイグニションキースイッチの回路を表しています。 接点機能は右下の表の通りでキーを一番右に回した時点で
ACC回路 、イグニッション回路 そしてスターターモーター回路 に+12Vが供給されてスターターモーターが回転して
エンジンが始動します。 但し、イモビライザーが不整合であったり、シフトレバーの位置が正しくない場合は、最終的に
セルモーターが回転しない構造になっています。
逆の言い方をすれば、イグニッションスイッチをイグニッション位置まで廻した上で、スターター回路 (Pin5とPin8)をジャンパー
ワイヤで一時的に接続してエンジンが起動すれば、イグニッションキー自体のスターター接点が不良であることが確認できます。
もしスターター回路の専用ヒューズF105(50A)が切れていたら、Pin5では無くてpin6のACC/IG回路電源とPin8を
ショートさせればスターターモーターが廻る筈です。 私の場合はPin5とPin8をジャンパーすることでめでたくエンジンが
起動しました。 やはり、イグニッションスイッチの接触不良でした。 思わずホッとすると共にガックリと疲れました。
(3) 帰宅後にイグニッションスイッチを点検します。 面倒なのはステアリング下のアンダーカバーを外す位で、カバーが外れればその後は
簡単です。 手順は3年半前にキースイッチを交換した投稿を参照して下さい。
必要な工具はプラスドライバー、小さめのマイナスドライバー、そして確認用のテスターとジャンパーワイヤ(短い電線)程度です。
(1)
(2)
(3)
(4) このキースイッチは以前にもアクセサリ電源が大幅にドロップして誤動作したり、スターターモーターが廻らないトラブルが
あって交換した経緯があります。その際の投稿内容はこちらです。 たった3年半で壊れてしまうとは信じられません。
交換したスイッチは写真のものでBMW純正品です。
(5) 例によって中を開けて見ます。 初回のトラブルで交換したスイッチ接点と比べると、接点の面圧を強化して接触抵抗を
軽減する為か根元部分に補強板が追加されています。 しかし、これで対策になるのでしょうか?
私見を言わせて戴くと、これでは全く解決になっていません。
(6) 何故ならば、このスイッチ接点を開閉する為に中心部に白い樹脂製のカムが配置されているのですが、このカムは
接点を押して回路をオフにする為に使われ、回路をオンにする際はカムの山が無い部分で燐青銅板のバネが中心
線側に戻ることによって接点を接触させる構造だからです。
[以下長文なので興味のある人以外はスキップして下さい]
そうなると、接点面圧はこのスプリング板の力以上に強くすることが出来ません。 しかもカム形状はなだらかなので、
スイッチをオンする時は非常になだらかに接点同士がソフトランディングします。 (写真(6)ではカム位置がずれています
が、接点(コネクタPin)7番と10番の位置と、銅製スプリング板とカムの関係を見て下さい)
通常、接点が接触する際は”カチン”と強くぶつかったり、接触後にこすれる様な仕組みにしたり、強く押すと接触面圧が
上がって接触抵抗を減少させると共に表面の酸化皮膜を破壊させます。 スマホやマウス、リモコン等で広く使われている
マイクロスイッチの様にゆっくりとボタンを押しても途中から”コツン”といった感触があって急にスイッチが入るのが望ましい
構造と思います。 これはスナップアクション構造と呼ばれ、スイッチの中に板バネが入っていて、一定のストロークに達すると
支点がずれて急に逆反り状態になって高速で接点同士を叩きつけます。これで切り替え時のアーク放電を減少させると
共に接点をリフレッシュしている訳です。 接点の理論は奥が深くてこんな詳細な論文もあるんです。
高価なBMWのイグニッションスイッチはこの配慮が全くされていません。 家庭内の壁スイッチの方がまだマシです。
持論を述べるとキリがないのでこの辺でやめますが、接点圧と酸化皮膜対策に付いては設計が良くないとしか言いようが
ありません。 真冬の雨の夜中にこんな接触不良が発生したらと思うとゾッとします。
(4)
(5)
(6)
(7) こちらがスイッチのコネクターピンです。 写真中段の3本はスイッチのコモン接点(Pin5,6,7)に繋がりますが錫メッキ
よりも光沢のある表面が硬そうな金属線材を使用しています。 上段の3本と下段の3本は銅板を丸めて錫メッキ
した中空の棒で自動車用コネクタピンとしては良く見るタイプです。 差し込みコネクタのピン同士は線接触しますが
硬い金属の場合は線の幅が狭くなって接触面積が少なくなります。 錫メッキ等の柔らかい金属の場合は差し込んだ
際にお互いに削りながら接触して行くので接触線の幅が広くなるだけで無く、酸化皮膜を除去して接触抵抗を減らす
効果があります。
(8) こちらは車体側ハーネスの先に付いているメスコネクタです。 この接点も錫メッキされた金属板を丸めて
コネクタハウジングに押し込んだ形状です。 接触性能は一般的にアクセサリ電源に使われているギボシ端子
と同等に見えますが、他の電子機器と比べるとかなりローコストな感じがします。 使用環境が厳しい自動車なの
で、もっと信頼性の高い接点を使って欲しいものだと思ってしまいます。
(9) イグニッションキーのコネクタを裏側から見た写真です。 Pin5(上段の真中)とPin8(上段の右側)が接続
するとセルモータが回ります。 ここだけ覚えていれば次回は何とかなります。
(7)
(8) (9)
(10) 写真中央の白いコネクターはシフトレバーがパーキング以外のときに中の棒が突き出してキーが抜けないような
メカロックをしている様です。 右上の小さいコネクターはイモビライザーのセンサーへ接続されている様です。
作業時に抜けない、様に注意しましょう。
(11) 今回のトラブルに対する処置ですが単純にスイッチ接点の問題だけでなくて、コネクタ間の接触不良も可能性が
あるのではないかと思いました。 何故なら、たったの3年半でスイッチ接点が接触不良となるのはあまりにも酷過ぎる
からです。
そこで、今回のトラブルで行なった対応策を纏めておきます。
[対策1] イグニッションキースイッチを分解して接点5と接点8を研磨しました。 基本的にこの対策でセルモーター
は再度廻るようになりました。 分解そのものはそれ程難しくありません。 以前の投稿を参照して下さい。
[対策2] 賛否両論があろうかと思いますが、とにかくコネクタの接触不良の可能性もあるし、接点を磨いただけで
どの位効果があるかが不明なので、取敢えずキースイッチのスターター配線のピン(Pin5と8)の裏側に
太目の銅線(VVF2.0ケーブルの芯)を突っ込んでPinに圧力をかけると共に、それらにビニール被覆線を
経由して写真の様な非常用起動スイッチを増設しました。 これは主として家族を安心させる対策とも言
えます。 様子を見た上で外そうかと思っています。
(10)
(11)
【エンジンが起動しない場合のおさらい】
◎セルモーターは廻るがエンジンが起動しない;電圧低下か、点火回路
の故障。
クランクポジションセンサーの故障等
燃料ポンプの故障、フィルターの詰まり。
◎何回かクランキングしてやっと廻ることが多い;燃料ポンプのone way valve不良。(別途バルブを外付けする)
◎カチン音はするがセルモーターが廻らない。;電圧低下かセルモーター内部の故障。 電圧値で判断する。
◎カチン音がしない。 セルモーターが廻らない。 他の電装品には電源が供給されている。
;イグニッションキースイッチのPin5とPin8をコネクターワイヤー
側で1秒ほどジャンパーしてみる。
ジャンパーするとセルモーター起動 ⇒ イグニッションキースイッチの不良かコネクタの接触不良
ジャンパーしてもセルモーター起動しない ⇒ イモビライザーの故障かキーIDの不一致またはスターター回路
の
ヒューズ切れ。 もし、この場合、イグニッション電源(Pin6)とPin8
をジャンパーしてみるのも一法と思います。
作業日:
2016年12月29日
走行距離:
88,986km
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家族と一緒の時に突然の故障は困ったもんです。 今回の対策でどの程度効果が持続するのかは不明ですが、
暫らく様子を見て行こうと思います。
しかし、こんな方法は一般的ではありませんよね。 最近の車はキースイッチでは無くて接近センサーとプッシュスイッチ
の組み合わせなので、この様なトラブルは発生しないと思います。 やはり古い車に乗り続けるには車に対する愛着と、
たゆまぬ勉強?をしなければならない様です。
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