とうとう自分の車にもこのトラブルが発生してしまった。 時々、エクスパンションタンクを目視で確認していたのだが、このトラブルはそんなことで正体を開かすほど甘くはなかった。 やはり長期間のヒートサイクルや圧力で樹脂が劣化し、何の前兆も無く突然に破裂して冷却水が放出されてしまう。 それが山の中でも高速道路を走行中であってもだ。 故障のインパクトが大きいのでやはり10年程度でタンクを予防交換した方が良さそうだ。 今回は運に恵まれていて故障発生場所が比較的自宅に近く、さらにコンビ二も2Km程度のところにあったので応急処置部材や水を調達してなんとか自宅まで帰着できた。 下記はその顛末です。 |
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【上記写真は冷間時に撮影したものです】 |
自宅から比較的近い市原市の長柄方面に向けて走行中に、いきなりメーターパネルにクーラント液面低下の警告燈が点燈! 但し水温計は真上を指したままの正常値を示しているのでまだダメージは受けてなさそう。 一度、エンジンを停止した後、再度スタートさせても警告燈は消えない。 ハアー・・ガックリ! 仕方がないのでボンネットを開けてラジエターおよびエクスパンションタンクをチェックしたところ、何とエクスパンションタンクの角付近から蒸気の様なものが漏れておりました。 タオルで押さえながらエクスパンションタンクのキャップをゆっくり開けてみると、クーラントの液面が全く見えない!! ガッカリですがまだ水温計が正常なので、急いで近くのコンビ二まで自走しました。 |
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出来ればレッカーのお世話にならずに自宅まで自走したい気持ちにかられ、コンビ二駐車場で液漏れ箇所を点検したところ、やはりBMW E46のお約束ともいえるクーラント エクスパンションタンク角のヒビ割れでした。 ペットボトル2Lを購入し水を入れてみましたがダダ漏れですぐに同量が漏れてしまいました。 そこで応急処置を考えました。 コンビ二ではガムテープを販売しているので、これをヒビ部分に貼り付けて水漏れを抑えられそうだと思い、車載工具でエアクリーナーボックスを外して作業スペースを確保します。 ここまではマイナスドライバーと 10mmスパナだけで大丈夫です。 水は店員さんにお願いして水道水を分けて戴きました。 本当に感謝です。 |
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ひび割れ範囲は下記の写真11で示しますが、ヒビの下端がヒーターホース接続部の突起にかかっているのでガムテープをこの部分に強く圧着させて内側からの圧力に打ち勝つことは無理の様ですが、自宅までの20km位は水を補給しながら走れば何とかなりそうな感じです。 まず、ヒビ周辺の汚れをタオルでクリーニングし、乾かしてから縦にガムテープをしっかりと貼り付けて液漏れ部分を塞ぎます。 次に圧力対策として、横方向にガムテープを何枚も貼り付けて縦に貼ったテープが剥れない様に抑えます。 赤くマークした線がひび割れ部分です。 |
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エンジンをかけてみると一見、水は漏れていない様です。 自宅までの30分位であれば何とか大丈夫そうです。 ペットボトルに予備の水道水を補充し、店員さんにお礼を言ってから そろそろと自宅へ向かいます。 いやーコンビ二って本当に便利ですね。 然しながら帰路でも2度ほど警告等が点燈。 やはりガムテープでは完全防水に至らず少しずつ水がポタポタと垂れて来ます。 ヒヤヒヤしながら、その都度水を足しつつ何とか水温計が正常値のまま自宅に到着出来ました。 その時の液漏れ状態が左の動画。 こんな感じだと10分位で警告等が点燈してしまいます。 (横の奥方の顔も限界に近い感じ。 もうこの車は捨ててしまえと言われる方が心配) |
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さて、トラブルの原因が明確なのでDIYで修理をすることにしました。 まずはネットで先人の作業を勉強してからエクスパンションタンクをネットで調達し、修理作業を開始することにします。 (エクスパンションタンクは値段の安い社外品を購入しましたがこれで苦労しました) その前にクーラントを抜くのですが、ドレインプラグは2ヶ所あります。 写真上段が、エンジンブロックに向かって左側2番シリンダーの脇付近のドレインプラグですが、正直言うと面倒なのでここは抜かず。 次に@で示すラジエター底の青色のドレインプラグを抜いてクーラントを容器に収容しました。 |
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まずはヒーターユニットからエクスパンションタンクへ戻るパイプを外します。 このホースはオルタネーターのベルトのすぐ横でエクスパンションタンクに接続されているものです。 ホースに付いているクリップを持ち上げて、隙間にマイナスドライバーを突っ込んで揺さぶりながら抜きます。 今回はタンクのクラックがこの辺りまで発生していたので、ホースを外しても新たな液漏れは多くはありませんでした。 そうそう、エンジン下には排出されたクーラント液を受ける容器を必ず置いて下水に流れない様にしましょう。 |
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次にラジエターのアッパーホースを外します。 アッパーホースの口は二つあって、Cの大口径の方はラジエターに接続され、Bの小口径の方がエクスパンションタンクに接続されています。 これらもクリップを持ち上げた後に大型マイナスドライバーを隙間に突っ込んで揺さ振りながら、こじりながら外します。 長期間にわたり交換していない場合、固着が激しくてなかなか抜けてくれません。 (写真はエアクリーナーが付いたままですが、作業時は外しておきます。 また、ファンシュラウドとファンも外すと広いスペースが確保出来て作業効率が格段にアップします) |
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左側の画像でDのノブはエクスパンションタンクとそのベースプレートの接続部をロックしているクリップの先です。 ここを矢印の向きに引っ張るとロックが外れます。 D‘はATFオイルクーラーとマウンティングプレートの接続部をロックしているクリップで、これを引っ張り上げて揺さ振るとオイルクーラーが外れ、相当量のクーラントが流れ出します。 但し、エクスパンションタンクだけの交換であればATFオイルクーラーを外す必要はありません。 |
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写真のエクスパンションタンクのマウンティングプレートも外す必要はありませんが説明用に掲載しました。 一番左のホース穴はエクスパンションタンクからエンジンブロックに送るクーラントの流れ口で、メインのサーモスタットの開閉に関わりなく、クーラントを流し出します。 Eはクーラント液面センサーのコネクタで予めこれを抜いておいた方が良いのですが、必須ではありません。 エクスパンションタンクを外した後でも取り外し可能です。 中央下の三つの並んだ穴にはATFオイルクーラーを取り付けます。 |
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これがタンクから抜いたクーラント液面センサースイッチです。 単なるガラス封入型のリードスイッチで、タンク内のクーラント液面が残り5cm以下になるとフロートに取り付けた磁石が接近して接点がオンし、メーターパネルのクーラントレベル警告灯を点燈させます。 尚、センサースイッチが差し込まれている筒部分はクーラントが入らない構造になっているので、この取り付け部分にはシール用のパッキンは存在しません。 |
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さて、ここでエクスパンションタンクを引き抜く準備が出来ました。 しかし、いくら引っ張り上げてもビクともしません。 あまり強く引っ張り上げると接続しているマウンティングプレートが割れてしまいそうな不安がよぎりますが、クリップをキチンと抜いておけば多分大丈夫です。 とにかく手首を梃(てこ)にして思い切り引っ張り上げると「バリン!」と何かが割れた様な感触と共にタンクが外れます。 もし、センサーコネクターを外していない場合は、大きく引っ張り上げすぎるセンサースイッチのワイヤーが引きちぎれることがあると思いますが10cm程度であれば大丈夫と思います。 クラックは写真のとおり定番の場所に発生し、その長さは想像以上でした。 |
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タンクを取り外すと、緊張感が緩んでガックリと疲れます。 これで完璧と思いきや、写真中央の部分にサーモスタットの樹脂が割れた跡があり、細かい破片とATFサーモスタットの下半分がマウンティングプレート側に残っています。 でも、エクスパンションタンクと一緒にATFサーモスタットを購入しておけば心配は無用! これは構造的な問題で、長期使用のサーモスタットとタンク、そしてマウンティングプレートの間で固着が発生してしまい、サーモスタットハウジングが割れて分裂しない限りはエクスパンションタンクが抜けない為です。 |
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これがエクスパンションタンク側に残ったATFサーモスタットのハウジング上半分です。 下半分のハウジングとの接続ラッチと思われる部分が割れてしまっています。 タンクを抜く際に「バリン!」と感じたのは、この部分が割れてしまったショックであると思われます。 金属製のハウジングを使うとか、2分割しない構造であればこんなことは無いと思いますが、 とにかく先人達のお知恵を拝借してサーモスタットも一緒に購入して良かったと思いました。 |
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問題はマウンティングプレート側に残ったATFサーモスタットの下半分が固着して抜けないことです。 割ってしまうと樹脂のカケラが冷却系の内部に入り込んで拡散してしまうと問題です。 思い切って、ダイソーで購入したドライバータイプの小型くぎ抜きを差し込んでグリグリとこじりながら上に引き抜いたところ、スポッと抜けました。 カケラは内部には飛散しませんでした。 |
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ATFサーモスタットの新旧を比較してみます。 左右が入れ替わってしまいましたが、上が新品、下が破壊されたサーモスタットです。 下半分にはO-Ringが二つ付いていて、これがしっかりと踏ん張っていた為に、思い切り引っ張り上げた際に上半分との繋ぎ目の樹脂を破壊してしまった様です。 |
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繰り返しますが、長期間使用したサーモスタットとエクスパンションタンクは必ずと言って良いほど固着し、タンクを外す際にサーモスタットの樹脂部が割れてしまうので必ずセットで購入して下さい。 取り付けの際はサーモスタットの向きに注意する必要があります。 Expansion
Tank P/N 17117573781 ATF
Thermostat P/N 17111437362 |
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【画像をクリックすると拡大します】 |
クーラントの選択には迷いましたが、BMW純正のクーラントも国産有力メーカーのクーラントも組成は同じ様です。 今回は自己責任で写真のKYK LLCを4リットル調達しました。 私のM52TU型エンジンの場合はクーラント容量は8.4Lです。 新クーラントを注ぐ前に旧クーラントを完全に抜いてから内部洗浄するか、 旧クーラントの色が完全に消えるまで内部洗浄を繰り返してから4リットル以上の水を抜いておく必要があります。 |
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<クーラントの補充> BMWのクーラント補充は必ず正規手順に従う必要があります。 ・イグニッションキーをオンにしますがエンジンを始動させないでください。 ・車室内の温度制御を全暖に設定し、送風機を低設定に設定します。 ・センターコンソール部にあるエアコンの送風切り替えダイヤルを赤三つの最高温度に設定します。 ・アッパーホースのブレードスクリュー(エア抜きスクリュー)を緩めておきます。 ・クーラントをエクスパンジョンタンクにゆっくりと満たします。 ブリードスクリューから冷却液がこぼれない ときは、ネジを抜いてもかまいません。 一杯になるとブリードスクリューから冷却液と泡が溢れますが 泡が完全に無くなるまで待ってからブレードスクリューをしっかりと締めます。 M52 TU / M54の冷却システム容量は8.4Lです。 ・ラジエターキャップを締めてからエンジンを運転し、クーラントを通常運転温度まで上昇させる。 ・その後、エンジンを停止して放置し、冷間状態のクーラントレベルを再確認してください。 ・クーラントレベルインジケータがMAXになるようにクーラント補充/抜き取り等の調整します。 |
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念の為に、アッパーホースを強く摘んでエクスパンションタンクの液面が変化することを確認します。 万が一、クーラント補充が正常に行われなかった場合、エクスパンションタンクの液面が正常であるにも関わらず、クーラントがアッパーホース、サーモスタット、ウォーターポンプのレベルにまで上昇していない場合があります。 そうなったら大変です。 エンジンをかけると高圧の蒸気がラジエターキャップから噴出し、エンジン内にクーラントが廻らないので水温計が振り切れてしまう程、エンジン温度が上昇する場合があります。 |
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さあ、これで作業完了! ・・・と思いきや、何やらクーラントが漏れています。 確認すると、アッパーホースの小径コネクター部分とエクスパンションタンクの継ぎ目からジワジワとクーラントが漏れているではありませんか。 アッパーホースは今年の1月に交換したばかりで、見た感じも悪くありません。 ガッカリしながら確認を進めると、どうやら今回交換したエクスパンションタンクとアッパーホースの接続部にガタが発生し、その隙間からクーラントが漏れていることが分かりました。 交換前の純正エクスパンションタンクとの間では、こんなガタは発生しませんでした。 |
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エクスパンションタンク側の接続部をジックリと眺めます。 すると写真の様にクランプ金具が入る溝とホースに挿入する部分の形状に差があることが分かりました。今回の社外品ではクランプ金具がしっかりと奥まで入らないのでガタが発生するのです。 早速、販売元に連絡を行ない状況を説明して他社製の代替品を送って戴くことになりました。 アクションは非常に早く、販社の誠意を感じさせてくれる出来事でした。 |
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これが、送られて来た代替品のBEHR(HELLA)製のエクスパンションタンクです。 また、最初からやり直しの作業を強いられましたが、今度は大丈夫。 ATFサーモスタットも固着する前なので問題なく外れました。 こんなことってあるんですね。 多分、詳細設計図を開示されていない非純正部品メーカーは、現物から図面を作成するいわゆる リバースエンジニアリングで製品を作っているのかと想像してしまいます。 従って、その整合性の許容範囲が狭くなっていて、正常に機能する場合とそうでない場合の両方が発生するのかなと思います。 やはり水漏れやエア漏れが心配な補修部品は純正を使うべきであると、考えさせられた出来事でした。 格言:格安品は事情が明確でない場合は使わないこと。 |
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左の図は水冷系の概略図です。 参考に掲載しました。 |
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6月10日追記
エクスパンションタンクを交換後、以前から気になっていた内部構造を調査してみました。
下記投稿タイトルをクリックするとリンクします。
2017.06.10 ラジエーター・エクスパンション タンクの解剖
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