この記事はアマチュアである私の推測に基いて記録した自分用のメモであり、写真や図面以外の説明については事実と異なる可能性

が大です。予めご了承の上、参照して下さい。 明らかに間違いである場合は こちら迄 ご指摘を戴けると有難いです。

 

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2017.01.11ラジエターアッパーホース交換とクーラントレベルゲージ顛末            

クーラントレベルインジケーター棒が折れてエクス パンションタンク内に落下! これがタンクひび割れの警告だったのかもしれない。

その際にインジケーター棒が内部に落下したままでも機能的に問題が発生しないのか?との疑問が発生。

 

2017.04.16 ラジエーター・エクスパンションタンクの破裂。 コンビ二で応急手当】 

自宅までクーラントレベル警告燈が点燈するたびに水を補給しながら帰宅したが、警告燈が点燈してすぐに水を補給すればエンジンに

悪影響が発生しないのか?との疑問が発生。

 

 

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左図がBMW E46 M52型エンジンのクーリングシステムです。

加熱されたクーラントはエンジンブロックからサーモスタットハウジングを経由してラジエターアッパーホースに流れ込みます。 アッパーホースの出口は二つあり、大口径の出口はラジエターに接続し、小口径の出口はエクスパンションタンクに接続されています。

E46のエクスパンションタンクは通常の国産車と異なり前述の通りラジエターとは直接接続されていませんが、熱いクーラントが直接流れ込む構造なので常に高温高圧で加圧されています。

この様な厳しい使用環境にも関わらず、タンクは樹脂製となっている為に特に角の部分にクラックが発生し易い弱点を持っています。 この様な構造であれば熱と圧力に強い金属材料を使って欲しいものです。

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クーラントの流れはアッパーホースの太い口からラジエターに流れ込み、冷やされたクーラントは右側のロアーホースからサーモスタットを通してエンジンブロックに戻されます。

前述のとおり、アッパーホースの細い口からの流れはエクスパンションタンクに送られますが、その殆どはエクスパンションタンク下部のATFオイルクーラー用のサーモスタットを経由してATFオイルクーラーに送られます。

左側の青い線は室内のエアコンヒーターコアからのリターンホースからの流れを示しています。

 

 

 

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ラジエターアッパーホース本体を拡大して表示します。 

クーラントはエンジンブロックからサーモスタットハウジングを通過してアッパーホースに送られますがアッパーホース側のサーモスタットハウジングはエンジンブロックとアッパーホース間の接続アダプターとして使われ、バルブ開閉機能はありません。

サーモスタットは同じハウジング内のロアーホースとエンジンブロック間に組み込まれており、エンジンが冷えた状態ではラジエターからの冷水を塞ぐ方式をとっています。

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【タンク開口部の説明】 @からD      

@   ラジエターキャップの口(キャップを外すと お馴染みのクーラント水位を示す棒が飛び出て来ます)

A   細い方のラジエターアッパーホースからの流入口(高温高圧)

B   ヒーター熱交換器からの流入口 (高圧、比較的低温)

C  ATFクーラーへの流出口 (ATF用サーモスタット ⇒ ATFクーラー ⇒ マウンティングプレート)

D マウンティングプレートへの流出口。 (マウンティングプレートからエンジンブロックに戻ります。)

 

右下の嵌め込み写真はクーラントレベルが下がってセンサーがヒットする位置を示しています。 

概ねBのヒーターからの流入口までクーラントレベルが下がるとメーターパネルに警告燈が点燈します。

問題なのは、ウォーターポンプの軸の位置が左図の上下にカットした切断面と概ね同じ高さの為、クーラントレベル警告等が点燈するレベルになるとウォーターポンプにクーラントが還流出来なくなる可能性があると思われることです。(あくまで推測レベルです)

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【タンク空間部の説明】 A から F

エクスパンションタンクの中は写真の様に区切られていますが、穴の大小の差はあれどもタンクの上部か底部で全てが繋がっています。 但し、高温高圧のBに対しては小さな穴を経由させて流量を制限している様です。

A :クーラント メインタンク室

B :ラジエターアッパーホースからのクーラント通路 (ATFサーモスタットへ流れます)

C :オーバーフローしたクーラントをラジエターキャップ直下に戻す通路(下から上)

D :クーラント メインタンク室

E :ラジエターキャップ直下 クーラントレベルインジケーター棒とフロートスペース

F :クーラントレベルセンサーのフロートとスイッチ室

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左図はATFオイルクーラへのクーラント供給口であるCと、ヒーターユニットから送られて来たクーラントをマウンティングプレート経てエンジンブロックへ戻す為のDの送出口です。Cに開けられた穴が意外と小さいので驚きます。 ラジエターアッパーホースから送られた高温高圧のクーラントはB空間から写真の小さな穴を経由してCの空間に入った後にATFサーモスタットを経てATFオイルクーラーに運ばれます。 穴が意外と小さいので驚きます。

もし、ATFサーモスタットが閉じてしまうと高温高圧のアッパーホースからのクーラントは殆ど流れず、一部はメインタンクであるE空間に針の穴の様な小さい穴を通してしか流れないことです。

この空間の圧力が異常に上昇した場合はクーラントがC空間を経て、ラジエターキャップ下のオーバーフロー穴からチョロチョロとメインタンクに流れ込んでシステム全体と同じ圧力になる様に調整します。

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上記の説明の補足ですが、左の写真はCの空間に開けられた各穴の大きさを示しています。

この写真から見ると、ラジエターアッパーホースから流れ込んだクーラントは殆どタンクに溜まらずにATFサーモスタットに送られる様に見えます。

もし、ATFサーモスタットが閉じた状態の場合は、ピンホールを経て圧力を逃がす程度の流れしかありません。

 

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左上@はタンクのキャップ、キャップから補充されるクーラントはEの空間に流れ込み、タンクの底にある穴と、写真の上部の切れ目からF空間とA空間に流れ込みます。

F空間は、クーラントレベルセンサーのフロート室でA空間はメインタンク空間です。

F空間の底にあるEはクーラントレベルセンサーの穴ですが、タンクの外側のみ開いていてクーラントが入り込まない構造になっています。 センサーはフロートの磁石でオン/オフします。

キャップを開けると飛び出すお馴染みのインジケーター棒とそのフローとはE空間に装備されています。

ラジエターアッパーホースから流れ込む高温高圧のクーラントはAの口からBの空間を経由してATFクーラーサーモスタットのあるCの口に流れ込みます。

C空間はCの口の圧力が上昇した際のオーバーフロー排出通路です。

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F空間にはシールドされたセンサースイッチ用の筒と、底部にはE空間とF空間、そして

A空間とF空間を繋ぐカットが入っています。

E空間も同様です。 ラジエターキャップの中に落ち込んだ異物はある程度の大きさがあれば

E空間に留まりますが直径が5mm程度であればDの穴からエクスパンションタンクの外部に

流れ出る可能性があります。 特にエンジン内部に入り込むと何処かの冷却水パスを塞ぐことに

なってしまいます。 Cの穴からはサーモスタットのメッシュがあるので異物の外部流出はしないと

思いますがATFオイルクーラーに対する影響はケースバイケースと考えた方が良いかと思います。

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左図はエクスパンションタンクの仕切り壁に開いている穴の位置を示す為に色分けしたチューブ

を通したものです。 

赤チューブはラジエターキャップに注入したクーラントの流れを示すと共にメインタンク空間を示します。

白チューブはATFサーモスタット口のCの圧力が上がるとラジエターキャップ直下に圧力を逃がすパス

を示しています。 尚、ラジエターキャップの圧力調整は通常20BAR(20気圧)だそうです.

緑チューブはクーラントレベルセンサーの差込口で行き止まりの構造になっています。

黄チューブはラジエターアッパーホースからATFサーモスタットへの流れを示します。

青チューブはヒーターコアからマウンティングプレート経由でエンジンに流れ込むルートを示します。

 

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上記(9)の補足写真です。

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結構、穴だらけですが機能別に巧みに穴の位置や大きさを設定しています。

この写真を見て構造を想像して下さい。

E-F-A空間はそれぞれ低部で接続されています。

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【参考写真】

左図はエクスパンションタンクを引き抜いた際のマウンティングプレートの写真です。

赤丸部はマウンティングプレートとATFオイルクーラーの接続部です。

青丸はタンクの口Dとマウンティングプレートの接続部です。

黄丸はタンク口Cと接続されるATFオイルクーラー用のサーモスタットの下半分です。

引き抜く際に下半分はマウンティングプレート側に、上半分はタンク側に固着していた為に

ATFサーモスタットハウジングが割れて分離してしまいました。

エクスパンションタンク交換時には必ずATFサーモスタットも購入して下さい。

 

【エクスパンションタンク交換作業は下記リンク先を参照して下さい】

2017.04.16      ラジエーター・エクスパンションタンクの破裂。 コンビ二で応急手当

 

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【参考写真】

左図はエクスパンションタンクをマウンティングプレートから引き抜いた状態を示したものです。

理解の参考になれば幸いです。

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【参考写真】

ラジエターキャップ直下の空間 Eの出口は写真の通り タンク底部の壁をカットした1.5 x 2.5 cm程度の穴と写真7のタンク上部の隙間となっています。 

従って、ラジエターキャップから内部に物を落とした場合、この穴を塞ぐか貫通する大きさでなければ特に問題は発生しないと思われます。 例えばラジエターキャップを外すと飛び出してくるインジケーター棒がフロートから外れて落ちてしまっても、この穴を通過出来ないので影響はないと思います。 

でも錆びる鉄製品やゴミは駄目ですよ。

左側の黄色い線はクーラントレベルセンサーの仕組みを描いたもので、フロートの磁石位置によってガラス管に封入されたリードスイッチが開閉します。

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【参考写真】

ラジエターキャップ直下を輪切りにしてみました。

細い方のアッパーホースAから流れ込むB空間とラジエターキャップ@直下のE空間が繋がっていないのが理解出来ると思います。

Cの空間を通ってラジエターキャップ直下にチョロチョロと流れ出込むオーバーフローパスの穴は直径1mm位の小さな穴でした。

 

 

【まとめ】

 

●タンク内部はAからFまでの空間に分割されており、基本的には底部で接続されている。

 

●前述の通り、ラジエターキャップ直下とエア抜きバルブを含むアッパーホースは距離が近いので直接繋がっている様に見えるが、実際はかなり複雑なルートを経由して繋がっている。 

従ってクーラント補充時にエクスパンションタンクの液面が一杯になっても、ラジエター内部にクーラントが充満しているとは限らないことに注意が必要。 

クーラントを補充する際は必ずBMW整備マニュアルの指定した方法で行う理由はここにある。 (左記、緑文字のハイパーリンクの項目18を参照して下さい)

裏技ですが、Vent. Screw(エア抜きネジ)の穴からクーラントを注入するとラジエターとエンジンブロックに直接注入可能。 その後に正規供給手順を行えば作業時間の短縮が可能。

(液面が一杯の状態で、本編で説明したタンク内B空間の小さい穴を通してAの口からアッパーホースへクーラントを逆流させることも可能だが微量であり現実的ではない。)

 

●粘度の高いクーラント原液を直接補充すると、クーラン還流に非常に時間がかかる場合がある。 可能な限り指定の割合に希釈後に注入するのが望ましい。 

 

●タンクのキャップからタンク内部に異物を落とした場合、タンク底の縦壁に開いている15mm x 25mm 程度の穴を通過しない小片や縦長の棒状であれば影響は無いが、

ビニールシート状の柔らかい異物の場合はエンジンに対して致命的な損傷を与える可能性がある。

 

●タンクの破損、その他の理由でタンクの水位が低下するとエンジン内部のクーラントもタンクと同じ水位まで低下してしまう。 クーラントレベルセンサーが検知するレベルまで水位

低下した場合、ウォーターポンプにクーラントが供給されなくなる可能性が大きい。 従って運転中に警告が出た場合は、水を供給しながら自走するよりも速やかにレッカー移動

をさせた方が安全と思われます。

 

 

 

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