以前からの症状ですが、舗装が少し荒れた路面を走行中に右前輪周辺から軽い「コトコト」音が発生したり、ステアリングを回転している最中にあたかもステアリングシャフトがゴムの様なものに擦れる様な「キュルキュル」音や時には「ギーギー」音が発生して、かなり気になって来ました。 ハンドルの回転を止めれば異音は発生しないので、パワステポンプ系統の問題ではない様です。

そこで以前の投稿 「2017.11.21 右前ホイールのガタ調整 キドニーグリル落下防止策で簡単な確認を行ないましたが決め手がつかぬまま現在に至っています。

こうなると次の手として、懸案の右側タイロッドエンドを交換しなければ先に進むことが出来ません。

今回は意を決して交換したタイロッドエンド交換作業についてメモしてみました。

 

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タイロッドはステアリング・ギヤボックスの動きを前輪に伝える役割と、左図のAdjusting Rodを回転させることによってトー(サイドスリップ)を調整する役割を併せ持っています。

Adjusting Rodは単なるネジ山が切ってある金属棒なので、ネジを緩めて行くと最後は外れてしまいます。 このネジ部から内側をインナータイロッド、外側をアウタータイロッドと呼ばれ、劣化の状況により両側同時でも片側ずつでも交換が可能となっています。

インナータイロッドのFree Joint部分も今回のガタ音発生の原因として否めないのですが、作業として面倒なので今回はアウタータイロッドのみを交換することにしました。

パーツは純正が理想的なのですがDIYユーザーの味方であり、比較的安価でかつ実績のある MEYLE(マイレ)製を選択しました。

BMW 部品番号: 32106774221  Ball joint, right

 

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念の為にステアリングギアボックスからタイロッドエンドまでの部品図でを掲載することにしました。 この部品図は Real OEMサイトから引用しました。

 

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例によって作業確認書を兼ねた手順書を作成しました。

ついでに、ステアリングの異音対策と言うより切り分け作業も一緒に行うことにしました。

尚、この手順書はあくまで私の備忘録です。 全てに適合するとは限りません。

 

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タイロッドの交換で一番気になるのはトー(スリップアングル)の変化です。

DIYでは測定器を持っていないので努力目標でしかないのですが、最終的な数値として

タイヤを浮かした状態で、タイヤにマークをペイントし、かつ予め決めた高さ“h”の位置で左右の間隔を予めメモしておく方法を採用しました。

勿論、タイロッドその物にもマーキングを行ってノギスで正確に間隔管理を行なう方法も併用します。

ちなみに私の場合1480mmでした。 この間隔はあくまで目安で次回はマークを付け直さなければなりません。

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上記のマーキング箇所の様子です。 基準の棒に一定の高さ(h)を示す線を引いて、その高さでの両輪の間隔をガムテープで固定したメジャーで計測しました。 マークの高さは車軸から水平線を前方に延ばし、タイヤ外周部との交点が理想ですがフロントバンパーの陰になってしまうので流石にそれば無理でした。

その他、タイヤが回転しないための措置が必要ですね。

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次に交換前のタイロッドエンドのボールジョイント中心部から、インナータイロッドの任意の位置に付けたマークまでの距離を正確に測定しておきます。

このマークはロッド上の特徴のある部分が良いのですが、新旧パーツで長さが異なる可能性が大なので任意の位置にキズを付ける方法でも仕方がありません。

タイロッド固定ナットのサイズは純正品は18mmですが、今回購入した社外品は19mmでした。 締め付け指定トルクは 65Nmです。

左図の Lock Nutはインナータイロッドについており、締め付け指定トルクは45Nmです。

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更にしつこく、インナータイロッドのネジ部と上面、そしてアウタータイロッドの上面にも白ペイントを塗って交換前の位置関係を確認しておきます。

このマークを使ってネジをインナータイロッドからアウタータイロッドが外れるまでの回転数と位置を確認し、メモしておきます。

勿論、新旧タイロッドの長さの差を確認して場合によっては取り付け時に補正が必要です。

 

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左の写真は今回使用したAstro Products製のボールジョイントリムーバーです。

このリムーバーのボルト挿入幅は16mmなので感覚的にはボールジョイント固定スクリューの太さがM16まで使えると思ってしまいますが、実際は図10の様にスクリューの奥側からボールジョイント基部までの形状が太く、かつテーパー型になっており、この一番太い部分の径が16mm以下でないとリムーバーを正しく差し込めません。 従ってこの製品はせいぜいM10程度のスクリュー径を持つボールジョイントにしか使えません。

将来コントロールアーム(ロアーアーム)を交換する際にはM14M16等の超太ボルトのボールジョイントを抜かなければならないので、別途大きいものに買い直しをしなければならない様です。 最初からもっと大きなボルト挿入幅を持つ製品を買っておけば良かったと今頃後悔しています。 それに今回購入した製品は廉価な鋳造品なので、もし挿入出来てもネジを強く締めこむと強度が不足して割れてしまう可能性があります。

 

←これは小さすぎてダメ!

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写真は実際のボールジョイントのスクリュー部分に、リムーバーを噛ませたものですが、実はこれで一杯一杯で、ジョイント基部に近い部分には差し込めませんでした。

本来は、これではリムーバーを正しく挿入できないのでボールジョイントを抜くことは困難なのですが、何とか端に引っ掛けつつ、ハンマーで叩き抜くことが出来ました。

 

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本来はこれでしょうね。 狭い場所には入りにくそうですが、てこの原理を使ってこじ開けるタイプでかなりのパワーがありそうです

AP タイロッドエンドリムーバー TL295

 

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話はそれましたが、サイズが小さすぎるリムーバーを使いつつ、ボルトの頭やハウジングのダイキャストをハンマーで叩いたりで、ようやくタイロッドエンドが外れました。

この状態でタイロッドを前後左右に強くゆさぶってインナータイロッドのボールジョイント部のガタを確認しましたが、特に異状は感じられませんでした。

 

奥に見えるのはコントロールアーム(ロアーアーム)と右前輪の接続部で、このボールジョイントとストラット・アッパーマウント・ベアリングが回転軸となってタイヤの向きを変えています。

このゴムブーツはかなり厳しい環境に晒される為に破れて水が入り込んだり油脂が流出しやすいことと併せてボールジョイントにはかなりの荷重がかかるのでガタが出やすく、ギーギー音やコトコト音はここから発生している可能性も否めません。 

然しながらバールでこじったり揺すったりしてもガタが分からないので今回はこれ以上追及せずに、タイロッドの交換作業に徹することにします。

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いつもの様に外したタイロッドのボールジョイント部を分解してみました。

固定ボルトのてっぺんにはボールジョイント固定時にナットとボルトが共回りしない様に5mm Hexレンチを差して固定する穴が掘ってあります。 但し、リムーバーのネジが当る部分は擦れて変形していました。

ゴムブーツの中にはまだまだ柔らかさと品質を保ったモリブデングリースがたっぷりと入っており、ボールジョイントその物も少し重さを感じつつ擦動部の精度を保っており、全くガタを感じませんでした。 また、水分の混入も認められませんでした。 

(写真はグリースを拭き取った後に撮影したものです)

ということはアウタータイロッドは無罪! ガタと異音の原因は他にあると考えても良さそうです。

BMWディーラーからは何年も前から交換を強く勧められていたので間違いないと思ったので少々残念な気持ちです。 

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但し、写真の様にゴムブーツの固定リング部にひび割れがありました。

これを放置すれば中のグリースが流れ出たり、ゴミや水分がボールジョイント内部に浸入することは間違いないと思われます。

やはり19年の年月を感じてしまいます。

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これが新品のアウタータイロッドです。 ボールジョイントの固さは外した古いよりも更に固い感じがしました。 

ゴムブーツの両端は外れ防止のリングスプリングでしっかりと押さえてあります。

ご存知の様にボールジョイントはシャフト(ボルト)の先がボール状になっており、左側のハウジングに圧入されていて外れない構造になっています。 もし、ゴムブーツが切れてグリースが流れ出し、ゴミが入ってボールが固着した場合は無理に動かすとボルトが折れたり、圧入されたボール部が飛び出してしまう可能性があります。 そうなるとタイヤがいきなり外側を向いたりしてコントロール不能に陥ることになってしまいます。 恐ろしいですねー。 やっぱり、こんなものは早めに交換した方が良さそうです。

取付作業は、取り外しの逆なので説明は割愛します。

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タイロッドの交換作業が終わってから各部ゴムブーツの確認を行なったところ、右側スタビライザーリンクのブーツが破けているのを見つけてしまいました。

これを交換しなければ車検が通りません。 やれやれ・・・。

 

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更に、今回交換したタイロッドエンドの奥側にあったコントロールアームと右前輪を接続するボールジョイントのゴムブーツにもひび割れを発見してしまいました。

やはり右前輪のガタとコトコト音、そしてギーギー音の原因はここなのでしょうか?

ゴムブーツを交換しなければ来年1月の車検が通らない。 でも交換対象箇所が既に2ヶ所、今後増加して行く感じがします。 やはり19年間も交換しなかったツケが今頃になってドサッと出て来た感じです。

 

特に、タイロッドエンドやコントロールアームのボールジョイントは可動回転角が大きい為にゴムブーツ固定部やゴムブーツそのものに大きなストレスがかかります。 固定リングで押さえているゴム部分は力が集中したり、スライドしたりでパックリと割れ易いのかも知れません。

この部分のボールジョイント破壊が怖いので今回はゴムのひび割れ部分から固めのオイルをたっぷりと注入しておきました。

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ステアリング回転時にギーギー音が発生する可能性が高いのは、ボールジョイントの他にステアリングシャフトとフレームの間に設けられたスライドカップの異常か、ユニバーサルジョイントの回転部分の固着が考えられます。

今回は、この両方に外側からWAKOSのメンテルーブをたっぷりと拭きつけておきました。

手前のエンジンマウントのラバーはかなりヒビ割れていますね。 でももう少し我慢します。

トランスミッションや、ディファレンシャルのマウントラバーも本来は交換しなければならない時期なのでしょう。

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もう樹脂部品のひび割れや欠損のオンパレードです。 

前輪回転パルスセンサーワイヤーが左右共に固定用ゴムブッシングが欠落して配線がぶらぶらと揺れていました。 このままでは配線材の金属疲労で断線しかねません。

短期的措置としてタイラップで固定しておきました。 時間があれば正式なゴムブッシングを調達したいと思います。

 

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左図は取り外したタイロッドボールジョイントのゴムブーツのサイズです。

ネット情報ではサイズは少し異なるのですが、大野ゴム工業(OHNO) DC-2102で代用している人も居るらしいです。

 

作業日:2018714

走行距離: 96,856km

  

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今回の作業終了後は、荒れた路面で発生していた右前輪付近のコトコト音は大幅に減少したものの、まだ発生しています。

また、ステアリングシャフトを回転させた際のギーギー音は全く消滅しました。 多分、ボールジョイントの切れ目からオイルを注入したり、ステアリング

ユニバーサルジョイントの回転部分にオイルを差したことが功を奏したと思われます。 然しながら根本原因を特定していないので、時間の経過により

注入したオイルが切れて異音が再発する可能性は大きいと思います。 次回に異音が発生したら慎重に切り分け作業を行いたいと思います。

しかし・・・最近のトラブルは樹脂部品の老化に起因するものばかりです。 走行距離は月に400km以下、通常は全く日が差さないガレージで

紫外線の影響はそれ程大きくないと思いますが、やはり製造後19年間の時間経過は無視できない様です。 

来年1月に控えた車検を取るかそれとも廃車扱いとしてしまうか・・・・・気にいっている車だけに悩みは尽きません。

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