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ウォーターポンプとファンベルトのテンショナープーリーはBMW E46の傾向的な故障箇所です。 実際、私の2000年1月購入の愛車
も2007年10月に首都高速道路錦糸町付近を走行中に突然エンジンルーム内で「バタバタッ」と大きな音がし、みるみる水温計が上昇
すると共に赤い水温警告等が点灯しました。 丁度運が良く錦糸町ランプの手前で高速道路上の停止は免れましたが最悪の状態です。
首都高を降りてエンジンフードを開けると、オーバーヒートで漏れたクーラントの湯気がモアーと立ち上り、ファンベルトがささくれ立った様にちぎれ
て、それはそれは地獄の様なありさまでした。 映画や漫画で見る典型的なオーバーヒートのアレです。 後からなら笑えますがその時は・・・。
これでは全く動けないので同乗中の家内と義母に電車で自宅へ向かう様に頼み、車と私はJAFのキャリヤカーに乗って近くのBMW亀戸
営業所まで運んでもらいました。
これが山の中や雨降る夜道だと思うとぞっとします。 この時はクレジットカードと携帯電話の有難さに感動さえ覚えました。 この時の走行
距離は44,355Kmで使用期間は約8年間でした。
でも長い間国産車に乗っていた時はこんなにヒドイ故障はありませんでした、 それに同年の1月には車検でファンベルトを交換したばかりな
のでBMWの整備に対して怒りさえ覚えました。 まあ・・原因はベルトではなくて、ファンベルトのプーリーがロックして固着したことだそうです。
たかだか4万Km 程でこんな故障は想像もしませんでしたし、ベアリング内部が破壊して固着するほどであるのなら9ヶ月前にファンベルトを
交換した際に気が付くと思うんですけどね。
そんな、嫌な思い出があり、その後7年経過して現在の走行距離は78,350Kmになったので思い切ってベルト回りの消耗部品を自分で
交換することにしました。
交換部品はファンベルトのテンションプーリー、アイドラープーリー、エアコンベルトプーリ、そして故障発生率の高いウォーターポンプと、ついでに
サーモスタットです。 全て純正部品の弱点を改善した社外品を使います。 ベルト本体と冷却クーラントについては前回の車検時に交換し、
状態も良いので再利用することにしました。
++++交換作業を開始します++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
(1) まずバイブルであるサービスマニュアルを良く読んで構造や注意点、正規パーツ番号や締め付けトルクを調べると共に自分なりの手順書
を作成します。このサービスマニュアルが無ければ、とてもDIY整備は出来ません。
(2) ネットで手配したウォーターポンプです。 ポンプの羽は純正の樹脂製から金属製に強化されています。 何故、こんな大切な部品を
樹脂で作ったのか理由は分りませんが、とにかく樹脂製羽の空回りや羽が割れてバラバラになる故障が多かったそうです。私は今回の
8万Kmで初めて交換します。
(3) 7年前に突然破壊して交換したテンションプーリーとアイドラープーリー、そして8万キロ交換しなかったエアコン・テンションプーリーを今回
交換します。 エアコンベルトプーリーは何故かテンショナー付きの部品しか供給されていません。
(1) (2)
(3)
(4) (5) 自動車関係の整備では間違いは許されません。 力を要するプーリー関係交換手順と冷却水を抜くウォーターポンプ関係の手順
を分けて作成します。 下記、最初の2ページは関連部品の取り外しとベルトの外し方、プーリーの交換編です。
(6)(7) 次の2ページはクーラント抜き、ウォーターポンプとサーモスタットの交換についての手順書です。
(4)
(5)
(6)
(7)
(8) 知らなければ何処から手を付けたら良いのか全く分りませんが、マニュアルに従って作業を進めると簡単です。 まず、エンジンの吸気ダクト
(インテークダクト)を外しますが、ネジでは無くてたった4本のクリップで留められているのには驚かされます。
(9) インテークダクトを外すとベルトやプーリーが少し見えて来ました。 この後に冷却ファンとその枠を外すので邪魔になるインテークホースも
引っ張って抜いておきます。 私はエアクリーナーボックスを外しませんでした。
(10) 次に熱クラッチ付きの冷却ファンを外しますが、写真の特殊ツールでファンの取り付け部であるウォーターポンプのシャフトが共回りしない様に
固定します。 写真はこれから交換するウォーターポンプを使って工具の使い方を示したものです。 冷却ファンは中央のシャフトに32mm
の大きなナットで固定されています。 スペースが狭いので、この32mmのスパナも特殊工具として提供されています。
滅多に使わない特殊工具類ですが、これが無ければベルト交換も出来ないので諦めて購入しました。
(8)
(9)
(10)
(11) さて、練習後に実際の車のファンクラッチナットを外します。 共回り防止特殊ツールと薄型32mmスパナを使ってナットを外すのですが
狭い場所なので思うように共回り防止特殊ツールが入りません。 写真は何とかセット出来たところです。
(12) 力がかかる場合はスパナと特殊ツールの間を開く方向に回すのではなくて、縮める(握る)方向でネジが緩める方法が安全です。
この方が途中で工具が外れた場合でも、体のバランスを崩さなくて済むので安全です。 また、工具が外れて手を挟むこともある
ので、必ず作業用グローブを付ける注意深さは必要です。
(13) 32mmナットは40Nmの力で締め付けられていて緩めるのに難儀しますが、一度緩めばあとは簡単です。 単純にナットをCW方向に
廻せばナットは外れ、ファンがフリーになります。
(11)
(12)
(13)
(14)ファンの固定が外れたのでファンの枠(ファンシュラウド)と一緒に上に引き抜きますが、その前にACUセンサーのコネクタ(小)を抜き、エア
コンラジエターファンモーターのコネクタ(大きい方)をホルダから外して邪魔にならない様にしておきます。
(15)ファンシュラウドを固定している T25トルクスと右側のクリップを抜くと、ファンとファンシュラウドが一緒に引き抜けます。 その際、シュラウド
下の3本のツメ(赤丸で囲まれた部分)と本体側の受け穴(橙丸で囲まれた部分)の関係を良く見て覚えておくこと。 修理が終わって
組み込む際に大変重要なポイントになります。
(16)ラジエターファンとシュラウドを抜くと、こんなに広い作業スペースが現われます。 これなら何とか作業が出来そうで安心しました。
矢印のT50 トルクスをCWに廻してファンベルトを緩めてからベルトを外します。 CCWに廻すとプーリーが外れます。
(14)
(15)
(16)
(17)ラジエータ側に適当な板を置いて作業中に傷が付かない様に保護をします。 写真に今回の作業部分を注釈しておきます。
ベルトを再利用する際は元々の回転方向をマークしておきます。
これらの3つのプーリー交換は極めて簡単です。 手順書に従って外した後に規定トルクで締め付けて完了です。
力がかかる部分なので、作業中はバックスキンの作業用手袋とアイプロテクターを装着することにしています。
(18)エアコンベルトのテンションは前述T50トルクスの他に写真矢印の16mmヘッド部分をCWに廻しても緩めることが出来ます。
(19)新しいエアコンベルトテンショナーを取り付けた後の写真です。 13mmヘッドのスクリュー2本で固定します。
テンショナーの右側に差してあるL字型の丸棒はベルトを付けてから抜くとテンションがかかります。
(17)
(18)
(19)
(19a)外したエアコンプーリーの写真です。 15年間一度も交換していないので軸受けのガタも多くなり、ベルトテンションがかかる
プーリーの表面は写真の通り偏磨耗していました。
(19b) 更にベアリング内部はグリースが全面的には乾いていないものの、手で廻すとシャーと大きな擦動音を発して軽く廻るので潤滑
が不十分と思われ、近い将来にベアリングが破壊する可能性もあると感じました。 エアコンベルト系は、問題があってもエアコンが
停止するだけで、ファンベルトの様に発電停止、パワーステアリングのアシスト停止、そしてエンジンの冷却停止と言った路上停止
状態にはならないのがせめてもの救いです。
(19a)
(19b)
++++プーリーの交換は終了しました。次にウォーターポンプとサーモスタットを交換します++++++++++++++
(20)次にウォーターポンプを外す為に、ウォーターポンプのプーリー固定ボルトM6(10mm)スクリュー4本を外します。
(21)冷却水を抜くのでジャッキアップしてアンダーガードを外します。 (ジャッキアップ時の注意点はこちら)
(22)ラジエータのー向かって右側真下にドレインプラグがあるのでこれを抜き取ります。 クーラントを再利用する場合はバケツに
ビニール袋を入れてこぼさないように注意しながら抜き取ります。 但し、ラジエータ内には2.5L程しか冷却水は入っていま
せん。 残りはエンジンブロック内部とリザーバタンクの中です。 今回はエンジンブロック内の水は抜きませんでした。
(本来は抜くべきですが作業性が悪いので止めました)
(20)
(21)
(22)
(23)ステップ(20)でプーリーを外すと、ウォーターポンプ本体が現われます。 今回はエンジンブロックの水を抜いていないので、この
写真の様に「よだれ掛け」をしてウォーターポンプを外します。 クーラントは可能な限り回収して再利用するつもりです。
ウォーターポンプは4本のナットを外した後に手前に引っ張るか、ポンプ本体に開いているM6のネジ穴2個に10mmヘッド
のボルトを押し込んでポンプを強制的にエンジン本体から浮かせます。
ここで不安が・・・ウォーターポンプ本体を固定している4個のナットうち、右上の1個が簡単に緩んでしまったのです。 他の
3本はしっかりと締まっていました。 不安を抱えながら次のステップに進みポンプを外します。 この際、エンジンブロックのドレイン
から水抜きをしていないので、ポンプを抜くと冷却水も一緒にドバッと沢山こぼれて来ます。 これを「よだれ掛け」で受けます。
(24)新旧両方のウォーターポンプを並べてみます。 旧型のポンプの羽はやはり樹脂製でしたが、ヒビ割れも変形も無く、ベアリングの
ガリガリ感もなくて比較的良好な感じで、まだ暫らくは使えそうな感じです。 然しながら巷では私の走行距離と年数では絶対に
交換をしなければならないとされている部品です。 新品のポンプは強化対策品で羽は金属製に変更となっています。
(25)これがウォーターポンプを抜いた際にこぼれたクーラントの量です。 ほぼ全量回収したと思いますが約500C.C.程でしょうか。
(23)
(24)
(25)
(26)次にサーモスタットを交換します。 サーモスタットは黒い筒状のハウジングの中にありますが、BMWの場合は中にヒーター線
が入っているので、ハウジングごとの交換となります。
まずサーモスタットに繫がるラジエーターホースを外します。 本来は写真のクリップを引っ張り上げて抜くだけです。
(27)しかし、現実は甘くありません。 クリップを外して引っ張ってもビクともしません。 方法が間違っているのか??不安になり
ます。 今回、一番苦労したのはこのホース外しかもしれません。 でもYouTubeで他の作業事例を見ても簡単に抜いて
いるので、個別の問題が発生しているか思いましたが、最後の手段で愛用の錆びた大型マイナスドライバーでホースの端を
こじって見ると・・・ガリッとした感覚のあと、スポッと抜けました。 やはり長年愛用の古ドライバーの威力は絶大です。
ホースが抜けた瞬間にクーラントが吹き出すと思ったのですが・・・全然漏れませんでした。
(28)下側のホースも同様に抜けませんので、先にサーモスタットハウジングを外すことにしました。 10mmボルト3本と13mm
ボルト1本を抜き、全体を揺らしながらエンジンケース側からサーモスタットハウジングを引き剥がします。
この時もクーラントの漏れは一切ありませんでした。 この後に下側のホースを揺さぶりながら、こじりながら外しました。
(26)
(27)
(28)
(29)新旧のサーモスタットを比べてみます。 上が新品、下が外したパーツです。 見た感じではホースとの接続部に付着物が固着
していることと、ゴムパッキンがつぶれて山が低くなっている程度です。 でも1度オーバーヒート騒ぎを起こしているので、交換は
マストです。
(30)ウォーターポンプとサーモスタットの両方を外した写真です。ホースの縁は汚れが付いて汚いですが、エンジン側のハウジングは
青いクーラントの色と相まって惚れ惚れする様な美しさです。水垢など全く付いていません。
(31)新品のサーモスタットを取り付けます。 組み込む方は帰り道なので作業は簡単ですが、締め付けトルクや組み込み方法を
間違うと危険です。 サーモスタットハウジングは樹脂製なので締め付けトルクも厳格に指定されています。
(29)
(30)
(31)
(32)ウォーターポンプもナットで締め付けます。 M6ネジなので規定トルクも10Nmと驚くほど低い値です。 ここで問題が
発覚しました。 右上のナットがグニャーとした感じでしっかりと締まらないのです。 余り何度も廻すとエンジン本体から
伸びているボルトが折れてしまう危険があります。適当な感じ(多分5Nm位?)で廻すのを止めました。
他の3本は規定トルクでしっかりと締め付けました。 ウォーターポンプはエンジン側のハウジング内にポンプのO-Ring
を押し込んで防水をしているので、ポンプ全体が抜けない限りは水漏れを起こすことはありません。 このまま見ないことに
します。 (念の為、水漏れは毎日確認していますが問題ありませんので、このまま使います。)
(33)もう一度、作業部分のネジの締め付け確認を行ない、正常であれば白ペイントを塗っておきます。 これは、ネジの締め
忘れの防止と、ネジが緩んだ際に目視で確認出来るからです。
(34)ファンベルト、エアコンベルトをかけて、アンダーカバーも取り付けておきます。 次に冷却水を入れます。
(32)
(33)
(34)
(35)そうそう、プーリーには防塵キャップを付けておきます。 これでプーリーの寿命が随分と違うとか・・・。
(36) ここで抜いた冷却水を回収してリザーバタンクに戻します。 抜いた水は3L位と思いますが、殆ど回収できました。
笑ってしまうのは、ペットボトルを切ってファネルに使い、コーヒーのフィルターをゴミ混入防止策として使ってしまう私のDIY
自己満足型リサイクル方法です。 自分でも思います・・「ここまでケチすんなよ!」
(37)手順に従い、エア抜きと補水(0.5L程度)を行なった後にエンジンをかけて、異音や振動を確認します。 また、冷却水の
減りを確認しながら、ベントバルブを緩めてエア抜きの確認をして作業終了です。
今迄、プーリーのオイル成分が飛んだ為か、シャーシャーと大きな音を立てていましたが、すっかり静かになりました。
自転車のホイールベアリングもそうですが、ベアリングのグリース成分が無くなると、一見回転がスムーズになりますが
実際は金属同士がこすれて磨耗が加速度的に進んで最後は内部破壊して固着してしまいます。
グリースを入れることにより回転が重くなる感じがしますが、実際は油膜が金属を保護して負荷が大きい時は逆に回転
抵抗が少なくなります。 セラミックベアリングは別として手で廻して単純に回転が重い軽いと判断すべきではないと思い
ます。
(35)
(36)
(37)
(38)作業終了後にINPA OBDU Interface Scannerを接続して水温管理の状況や、エンジンの性能に関連する状況を
確認しました。 水温は20Km程度走行後ですが良好にコントロールされています。
(39) VANOSも以前と同様の数値を示しています。 OKと思います。
(40) Lambdaセンサー(O2センサー)は今回の作業に関係はありませんがBMWの8万Km定期交換部品となっている
ので、今回その起電力特性を確認しました。 何せ1個2万円+工賃で合計4個も使っているので交換となったら大変!
Lambdaセンサーは排気中の酸素濃度を電圧でECUに伝えます。 理論空燃比(ラムダ=1)の場合はLambda
センサーの出力は0Vになりますが、不完全燃焼の場合は最大0.8Vの出力になります。 ECUはLambda センサー
の出力から判断して理想空燃費に近づける様に燃料濃度を制御します。 スキャナーの画面から推測すると触媒手前の
センサーで最大0.70-0.78Vの出力が出ており、かつ最小0.03V程度で変化しているのでLambdaセンサー自体の
劣化は無い;即ち交換の必要は無いと判断できます。
(38)
(39)
(40)
(41)BMW E46 AM20の定期部品交換のリストです。 センサーやウォーターポンプ、プーリー等の部品が含まれていないので
もっと内容を充実して欲しい感じです。
(41)
作業日: 2015年01月07日
走行距離: 78,543 Km
★★★★ 今回の作業で今迄懸念していた部品の交換が終了しました。 これで今後の最低数年間は路上故障の危険が ★★★★
★★★★ 大幅に減少しました。 エンジンフードを開けると、ベルトプーリー周辺からの甲高いノイズ音が消滅したことは直ぐに ★★★★
★★★★ 分ります。 車を走らせると、特にエンジンが冷えている時に発生していた低いゴロゴロ音が全く無くなったことは大き ★★★★
★★★★ な安心です。
★★★★